ネオジム磁石は、希土類元素であるネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする磁石です。1980年代に開発されて以来、その驚異的な磁力と様々な特性により、現代社会の様々な分野でなくてはならない存在となっています。
ネオジム磁石の誕生
ネオジム磁石の発明には、2人の人物が大きく貢献しました。
佐川 眞人氏
- 1982年に住友特殊金属(現・プロテリアル)在職中に、ネオジム磁石を発明しました。
- インターメタリックス株式会社の創業者であり、代表取締役社長を務めています。
- 当時、磁石の常識では、鉄を主成分とした磁石は原子間距離が近いため、強い磁性を持つことができないと考えられていました。しかし、佐川氏は「ならばホウ素など原子半径の小さい元素を加えれば、鉄の原子間距離を広げられるのではないか」と考え、この発想に基づいて試行錯誤を続け、ついにネオジム磁石の開発に成功しました。
- 佐川氏の発明は、小型モーターや高効率モーターの開発を可能にし、家電製品、自動車、産業機器など、幅広い分野で広く利用されています。
ジョン・クロート氏
- 1982年にゼネラルモーターズ勤務中に、ネオジム磁石を独立して発明しました。
- 佐川氏とは独立してネオジム磁石を発明した人物です。
このように、ネオジム磁石は、佐川氏とクロート氏の研究によって誕生しました。2人の発明は、現代社会に大きな革新をもたらしました。
ネオジム磁石の特徴
ネオジム磁石は、従来の磁石と比べて以下の特徴を持っています。
- 圧倒的な磁力: フェライト磁石の約10倍、サマリウムコバルト磁石の約2倍の磁力を持つ、最強クラスの永久磁石です。小型軽量ながら強力な磁力を発生するため、省スペース化に貢献します。
- 高い保磁力: 磁力を長期間維持する能力に優れています。一度磁気を帯びると弱りにくく、長期間にわたって安定した磁力を使用できます。
- 加工性: 切削や研磨など、比較的容易に加工することができます。複雑な形状の磁石製作にも適しており、デザインの自由度を高めます。
ネオジム磁石の用途
ネオジム磁石は、その強力な磁力と高い保磁力、加工性などを活かし、様々な分野で幅広く利用されています。主な用途は以下の通りです。
- モーター: 小型モーターや高効率モーターの製造に欠かせません。家電製品、自動車、産業機器など、幅広い分野で用いられています。
- ハードディスクドライブ: HDDのプラッターを回転させるために使用されています。高性能なHDDの実現に貢献しています。
- スピーカー: 小型高音質スピーカーの開発に不可欠です。クリアな音質とパワフルなサウンドを実現します。
- 磁気レベラー: 建設現場などで水平・垂直を測定するのに用いられます。高精度な測定を可能にし、作業効率の向上に貢献します。
- 医療機器: MRI装置や磁気治療器など、様々な医療機器に搭載されています。診断や治療の精度向上に役立っています。
- その他: おもちゃ、マグネットアクセサリー、磁気ロックなど、日常生活の様々なシーンで利用されています。
ネオジム磁石の注意点
ネオジム磁石は強力な磁力を持つため、取り扱いには注意が必要です。主な注意点は以下の通りです。
- 脆性: 衝撃に弱く、割れやすいという欠点があります。取り扱いには十分注意が必要です。
- 錆びやすさ: 酸化しやすい性質を持っています。防錆処理が施された製品を選ぶ必要があります。
- 高温への弱さ: 高温になると磁力が低下します。使用環境によっては、耐熱性に優れた製品を選択する必要があります。
- 磁気干渉: 強い磁力を持つため、他の磁石や電子機器に影響を与える可能性があります。使用場所には注意が必要です。
ネオジム磁石の選び方
用途や目的に合ったネオジム磁石を選ぶことが重要です。以下の点を参考に、適切な製品を選択しましょう。
- 磁力: 必要な磁力に応じて、グレードを選択します。
- 形状: 円柱形、立方体、リング状など、様々な形状があります。用途に合った