ナフサ(Naphtha)は、ひとことで言うと「石油化学製品のいちばんの大元になる原料(粗製ガソリン)」です。
現在、中東情勢の緊迫化によってこのナフサの調達が滞ると、私たちの生活に密着したありとあらゆる製品の製造にドミノ倒しのように影響が出てしまうため、非常に深刻なニュースとして扱われています。
ナフサがどういうものなのか、そしてその主な用途について分かりやすく解説します。
ナフサとは何か?
原油を油田から採掘したあと、精油所にある大きな蒸留塔という設備で加熱し、沸点の違いを利用してガソリン、灯油、軽油などに小分けにしていきます。このとき、ガソリンとほぼ同じグループ(沸点が低い性質)として抽出される無色透明の液体が「ナフサ」です。
車に入れるガソリン = 主に燃料用
ナフサ = 主に「化学製品の原材料」用
日本の化学工場では、このナフサをさらに熱分解して、エチレンやプロピレン、ベンゼンといった「プラスチックやゴムの基礎になる成分」を作り出しています。そのため、ナフサは日本のものづくりを支える「石油化学産業のコメ(主食)」とも呼ばれています。
ナフサの主な用途
ナフサから作られる成分は、現代社会のあらゆる場所に形を変えて存在しています。主な用途は以下の通りです。
1. 各種プラスチック・樹脂製品(最大の用途)
身の回りにあるプラスチック製品のほとんどはナフサが起源です。
ポリエチレン・ポリプロピレン: レジ袋、お菓子の包装フィルム、ペットボトルのキャップ、バケツやタッパーなどの日用品。
PET(ポリエチレンテレフタレート): ペットボトル本体。
ポリスチレン: 食品のトレイ、家電製品のプラスチックボディ、発泡スチロール。
2. 合成繊維(衣料品)
服のタグでよく見かける化学繊維も、ナフサから作られています。
ポリエステル・ナイロン・アクリル: フリース、スポーツウェア、下着、ストッキング、カーテンなどのインテリア用品。
3. 合成ゴム
天然ゴムだけでは足りない需要を補う、工業用のゴム製品です。
用途: 自動車のタイヤ、輪ゴム、靴の底、ホース、各種パッキン(密閉部品)。
4. 塗料・接着剤・洗剤
液体や粘着性のある化学製品のベースにもなっています。
用途: 住宅や自動車の塗料、学校や工作で使う接着剤、合成洗剤(洗濯用・食器用)、化粧品の原料。
5. 医薬品・肥料
医療や農業の現場もナフサと無縁ではありません。
用途: カプセルや錠剤のコーティング剤、消毒液、各種お薬の有効成分を合成するための原料、農業用の化学肥料や農薬。
なぜ今、不足すると大騒ぎになるのか?
日本は、この重要な原料であるナフサを約6割〜7割近く海外からの輸入に頼っています。さらに、その輸入先や、国内で精製するための原油の多くを中東地域に依存しています。
そのため、現在のように中東情勢が悪化してシーレーン(海上輸送ルート)の安全が脅かされたり、原油価格が高騰したりすると、日本の化学工場へナフサが届かなくなります。
ナフサが不足すると、上記で挙げた「レジ袋」から「自動車の部品」「服」「薬」に至るまで、国内の製造ラインがストップするか、あるいは凄まじい製品値上げ(インフレ)が起きることになるため、経済ニュースで大きく警戒されているのです。