EBNF(Extended Backus-Naur Form:拡張バッカス・ナウア記法)は、先ほど紹介したBNF(バッカス・ナウア記法)をより簡潔に、読みやすく、強力に拡張したメタ言語(記法)です。
BNFでは、例えば「0回以上の繰り返し」などを表現するために、自分自身を呼び出す複雑な再帰(リカシブ)を書く必要がありました。EBNFでは専用の補助記号(メタ文字)が導入されており、日常的なプログラミングの文法定義や設定ファイルの構造設計などで広く使われています。
EBNFの具体的な用法と記法について、ルールと実践例を交えて解説します。
1. EBNFの基本記号(メタ文字)
EBNFでは、主に以下の記号を使って構造をスッキリ表現します。
| 記号 | 意味(役割) | BNFでの言い換え |
::= または = | 「〜で定義される」 | (同じ) |
... または ; | ルールの終わりを示す(言語による) | 改行など |
[...] | 省略可能(0回または1回出現する) | なし(別ルールに分ける必要があった) |
{...} | 繰り返し(0回以上の連続) | 再帰的なルール定義が必要 |
(...) | グループ化(優先順位の明示・選択のまとめ) | なし |
| | 選択(または / OR) | (同じ) |
"..." または '...' | 終端記号(実際の文字や文字列) | (同じ) |
2. 具体的な用法:BNFとの違いを比較する
「数字が1文字以上並ぶ整数」を定義する場合を考えてみます。
① 従来のBNFで書く場合
自分自身を呼び出す(再帰)ルールを2つ組み合わせる必要がありました。
BNF
<integer> ::= <digit> | <integer> <digit>
<digit> ::= "0" | "1" | "2" | "3" | "4" | "5" | "6" | "7" | "8" | "9"
② EBNFで書く場合
繰り返しを表す
{ ... } を使うことで、1行で非常にシンプルに表現できます。EBNF
integer = digit { digit } ;
digit = "0" | "1" | "2" | "3" | "4" | "5" | "6" | "7" | "8" | "9" ;
- 読み方: 「
integerは、1個のdigitの後に、0個以上のdigitが続くものである」という意味になり、直感的に理解しやすくなります。
3. 実践的な用法の例:もう少し複雑な構造
例えば、簡単な「変数代入文(例:
x = 123;)」の文法をEBNFで定義してみましょう。EBNF
assignment = identifier , "=" , expression , ";" ;
identifier = letter , { letter | digit } ;
expression = number | identifier ;
number = digit , { digit } ;
letter = "a" | "b" | "c" | ... | "z" ;
digit = "0" | "1" | "2" | ... | "9" ;
各ルールのポイント
- カンマ (
,): 順序の結合(「この順番で並ぶ」ことを示します。省略されることも多いです)。 identifier(変数名)の定義:最初に必ずアルファベット(letter)が1文字来ます。その後ろに、アルファベットか数字が0回以上続く({ letter | digit })という、多くのプログラミング言語にある変数名のルールを正確に表しています。assignment(代入文)の定義:「変数名 = 式 ;」という並びで構成され、最後にセミコロン(;)が必ず来る構造になっています。
4. なぜEBNFが好まれるのか?
- 可読性の高さ: BNFに比べて記述量が圧倒的に少なくなり、人間にとって読みやすくなります。
- ツールとの連携: ISO(国際標準化機構)などで標準化(ISO/IEC 14977など)もされており、EBNFの定義ファイルから自動でパーサ(構文解析器)を生成するツール(パーサジェネレータ)なども存在します。
独自言語のパーサを自作される際や、複雑なテキストフォーマットの仕様をドキュメント化する際に、このEBNFの記法を知っていると非常に強力な武器になります。
現在取り組まれている開発や、特定の文法をパースするような場面で、この記法を活用してみたいとお考えの箇所はございますか?