2025年12月15日月曜日

ビタミンB1の働きとは

 江戸時代に脚気の原因となった**ビタミンB1(チアミン)**は、「疲労回復のビタミン」とも呼ばれ、私たちの体が生きていく上で欠かせない非常に重要な役割を担っています。

その主な働きは、以下の2点に集約されます。

1. エネルギー代謝の要(かなめ)

ビタミンB1の最も重要な役割は、食事から摂った糖質(炭水化物)をエネルギーに変えるプロセスで働くことです。

  • 補酵素としての働き: ビタミンB1は、体内で**補酵素(コエンザイム)**の形になり、糖質を分解してブドウ糖に変え、さらにそれを体や脳が使えるエネルギー(ATP)に変換する際の、複雑な化学反応をスムーズに進める手助けをします。

  • 糖質摂取の多い日本人には特に重要: 米を主食とする日本人にとって、糖質の代謝に不可欠なビタミンB1は、意識して摂取すべき栄養素です。これが不足すると、エネルギーが十分に作れなくなり、疲労感だるさ食欲不振といった症状が現れます。

2. 神経機能の維持とサポート

ビタミンB1は、神経が正常に働くためにも不可欠です。

  • 脳と神経のエネルギー源: 脳の主なエネルギー源はブドウ糖です。ビタミンB1は、そのブドウ糖をエネルギーに変えるのを助けるため、中枢神経末梢神経の働きを正常に保つ役割を果たします。

  • 不足の影響(脚気の症状): ビタミンB1が不足すると、神経細胞へのエネルギー供給が滞り、神経伝達がうまくいかなくなります。これが、脚気の代表的な症状である手足のしびれ感覚の鈍麻歩行困難といった末梢神経障害を引き起こします。

  • 心臓への影響: 心臓も大量のエネルギーを必要とする臓器であり、B1不足でエネルギー代謝が滞ると、動悸息切れ、そして最悪の場合は心不全(脚気心)につながります。

🚨 不足のリスク(現代の「脚気予備軍」)

現代では、飽食の時代にもかかわらず、極端な偏食や以下のような生活習慣により、潜在的なビタミンB1不足(脚気予備軍)が増えていると言われています。

  • インスタント食品・加工食品中心の食生活

  • 過度な糖質制限やダイエット

  • アルコールの過剰摂取(アルコールの代謝にビタミンB1が大量に消費されるため)

慢性的に不足すると、疲労回復の遅れ、肩こり、目の疲れ、集中力の低下などの原因になることがあります。


ビタミンB1を多く含む食品や、効果的な摂り方について知りたいですか?🍚

江戸時代に「死の病」として恐れられた**脚気(かっけ)**とは

 江戸時代に「死の病」として恐れられた**脚気(かっけ)**は、ビタミンB1の不足によって引き起こされる病気です。

江戸時代、特に裕福な武士や町人の間で、精米された白米が主食として普及したことが大きな原因でした。ビタミンB1は主に米の胚芽(はいが)部分に含まれているため、白米ばかりを食べ、おかずなどからのビタミンB1摂取が少ない食生活だと、深刻な欠乏症となってしまいます。このため、脚気は**「江戸患い(えどわずらい)」**とも呼ばれました。

📌 脚気はどんな病気ですか?

脚気は、ビタミンB1が不足することで、主に末梢神経心臓に障害が起こります。

  • 初期症状: 全身の倦怠感、食欲不振、手足のしびれ、むくみ(特に足)など。

  • 進行した症状:

    • 神経障害: 手足に力が入らなくなり、歩行が困難になる、感覚が鈍くなるなど。

    • 心臓障害(脚気心・かっけしん): 動悸、息切れ、呼吸困難などが起こり、心不全から死に至ることもありました。これが「死の病」と呼ばれたゆえんです。江戸幕府の将軍の中にも、脚気で亡くなったとされる人がいます。

🩺 現在は治るのですか?

はい、現在は治療法が確立されており、多くの場合治る病気です。

  • 原因が判明したため: ビタミンB1が原因であることがわかっているため、治療の中心は、不足しているビタミンB1を速やかに体に補充することです。

  • 治療法: 重症の場合は、ビタミンB1製剤を点滴で投与し、心臓の働きを迅速に回復させます。軽症の場合は内服薬が用いられます。

  • 予防: 普段の食事でビタミンB1を積極的に摂る(豚肉、豆類、玄米など)ことで予防できます。

現代の日本で脚気が深刻化することは稀ですが、極端な偏食やダイエット、アルコールの過剰摂取などによってビタミンB1が不足し、発症するリスクはゼロではありません。


脚気について、江戸時代に「江戸患い」と呼ばれた背景や、ビタミンB1の働きなど、さらに詳しく知りたいことはありますか?💡