心理学における読心術(Mind Reading)とは、相手が何を考えているか、あるいは何を意図しているかを、確固たる根拠もないのに勝手に決めつけてしまう認知の歪みの一つです。
これは、自分の思い込みや推測に基づいて、相手の気持ちや考えをネガティブに決めつけてしまう思考パターンであり、多くの場合、誤解や人間関係の悪化を招きます。
読心術が認知の歪みである理由
「読心術」が認知の歪みとして機能するメカニズムは以下の通りです。
根拠のない推測: 相手の表情や態度、声のトーンといった表面的な情報だけで、その人が自分に対してネガティブな感情(「私のことを嫌っている」「私の話を退屈だと思っている」など)を抱いていると決めつけます。
事実の無視: 相手の実際の言動や、自分に対する好意的なサインを無視したり、軽視したりします。
自己成就的予言: 「この人は私を嫌っている」と信じ込むことで、自分自身が相手に対して防御的になったり、不自然な態度をとったりします。その結果、相手も不快感を覚え、実際にその関係が悪化してしまうことがあります。
この思考は、特に不安障害やうつ病を抱える人によく見られます。
具体的な例
日常生活における「読心術」の例をいくつか挙げます。
職場の例:
上司が挨拶を返してくれなかった。→「上司は私の仕事ぶりに不満があるに違いない」と考える。しかし、実際には上司はただ考え事をしていただけかもしれません。
友人関係の例:
友人がメールの返信をすぐにくれなかった。→「彼は私と話すのが面倒になったんだ」と考える。実際には、単に忙しかったり、メールを見落としていたりするだけかもしれません。
恋愛関係の例:
パートナーが疲れた顔をしている。→「私との時間が楽しくないんだ」と考える。しかし、仕事で大変な一日を過ごしただけかもしれません。
読心術の対処法
この認知の歪みを克服するためには、以下のステップが有効です。
気づき: まず、自分が「読心術」を使っていることに気づくことが第一歩です。
事実確認: 決めつける前に、「今、私は推測で考えていないか?」と自問自答します。そして、根拠に基づいた事実を探します。
代替案を考える: ネガティブな推測だけでなく、他の可能性を冷静に考えてみます。「もしかしたら、ただ忙しいだけかもしれない」「何か心配事があるのかもしれない」といったように、複数の可能性を検討します。
直接尋ねる: 状況が許せば、相手に直接、穏やかに尋ねてみるのも有効です。ただし、一方的な非難にならないよう注意が必要です。