「モラトリアム(Moratorium)」という言葉は、もともとラテン語で「遅延」や「猶予」を意味する言葉です。
現代では、使われる文脈(心理学、経済、社会)によって意味が異なります。それぞれの具体的な内容を整理して解説します。
1. 心理学・教育学におけるモラトリアム
最も一般的に使われるのが、心理学者エリク・H・エリクソンが提唱した**「心理社会的モラトリアム(青年期)」**という概念です。
意味: 社会的な責任や義務(仕事、結婚など)を一時的に猶予され、自分は何者なのか、将来何をすべきかを探求する期間。
具体例: 大学生の時期が代表的です。まだ社会人としての責任は負っていませんが、学びや経験を通して自分のアイデンティティ(自己同一性)を確立しようとする「自分探しの期間」を指します。
現代の傾向: 近年では「大人になりたくない」「ずっと猶予されていたい」という否定的なニュアンスで使われることもありますが、本来は**「自立するために必要な準備期間」**というポジティブな意味を持っています。
2. 経済・金融におけるモラトリアム
経済の分野では、主に**「支払い猶予」**という意味で使われます。
意味: 国や企業が、借金や債務の支払いが困難になった際、一定期間その支払いを停止・延期すること。
具体例:
国家債務: 国が経済危機に陥り、他国や国際機関への返済を一時停止すると宣言すること。
震災などの緊急時: 大規模な災害が発生した際、被災者のローンの支払いを一定期間待つ措置が取られることがあります。
3. 社会・政治におけるモラトリアム
特定の活動や執行を「一時的に停止する」という意味で使われます。
死刑執行の停止: 国際的な人権問題に関連して、死刑制度がある国がその執行を一時的に中止すること。
核実験の停止: 核保有国が、新たな核実験を一定期間行わないと宣言すること。
まとめ
| 文脈 | 意味 | 核心となる概念 |
| 心理学 | 社会に出る前の自分探し期間 | 「大人になるための猶予」 |
| 経済 | 借金の支払いを先延ばしにすること | 「返済の猶予」 |
| 社会 | 法律や制度の執行を止めること | 「実施の猶予」 |
[!NOTE]
日本語で日常的に「あの人はモラトリアムの中にいる」と言う場合は、多くの場合1番目の**「学生気分が抜けず、進路を決めかねている状態」**を指しています。
さらに詳しく知りたい特定の分野(心理学的な側面をもっと深く、など)はありますか?