Power Query(パワークエリ)は、Excelに標準搭載されているデータの取得、変換、結合、そして自動化に特化した非常に強力なツールです。一言で言うと「データの前処理を劇的に楽にする魔法の道具」のようなものです。
VLOOKUP関数やマクロでは手間の掛かる作業も、Power Queryを使うと驚くほど簡単に、しかも自動で繰り返し実行できるようになります。
Power Queryでできること(ざっくり)
Power Queryは大きく分けて以下の4つのステップでデータを扱います。
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接続 (Connect):
- 様々な場所にあるデータ(Excelファイル、CSVファイル、Webサイトの表、データベース、PDFなど)に接続します。
- 複数のファイルやシートをまとめて読み込むことも得意です。
- 例: 毎月フォルダに追加される売上データCSVファイルを全て読み込む。
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変換 (Transform):
- 読み込んだデータを分析しやすい形に「整形」します。
- 不要な列を削除したり、行をフィルターしたり、データ型を変更したり、文字列を分割・結合したり、計算列を追加したり、集計したり、欠損値を処理したりと、非常に多くの加工がマウス操作だけで行えます。
- 例: 顧客名の列から「様」を削除する。日付の列から「年」だけを抽出する。複数の列を結合して新しいコードを作る。
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結合 (Combine):
- 複数のデータを「結合」したり「追加」したりします。
- ExcelのVLOOKUP関数やHLOOKUP関数の上位互換のようなイメージで、**複数テーブルのデータをコード(キー)を基に紐付け(マージ)**できます。
- 異なるレイアウトのデータでも、縦に結合(追加)して一つの大きなテーブルにまとめることも可能です。
- 例: 商品コードをキーにして、商品マスタと売上データを結合し、売上データに商品名を追加する。
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読み込み (Load):
- 整形・結合されたデータをExcelシートに出力(読み込み)します。
- 元のデータは一切変更されず、Power Queryが処理した結果だけが新しいシートに表示されます。
Power Queryが「すごい!」と言われる理由
- GUI操作で簡単: 基本的にプログラミング(VBAなど)の知識がなくても、マウス操作でデータの加工・整形ができます。裏側では「M言語」という言語が自動生成されていますが、意識する必要はありません。
- 処理手順の記録と自動化: 一度Power Queryでデータの加工手順を設定すれば、その手順が「クエリ」として記録されます。次に新しいデータが追加されたり、元データが更新されたりした場合、「更新」ボタンをクリックするだけで、記録した手順が自動的に実行され、最新のデータが反映されます。 これが最大のメリットと言えるでしょう。
- 元データを壊さない: Power Queryは元データに直接手を加えるのではなく、あくまで元データのコピーを加工します。そのため、誤って元データを変更してしまう心配がありません。
- 様々なデータソースに対応: ExcelやCSVだけでなく、Access、SQL Server、Webサイト、PDFなど、多岐にわたるデータソースからデータを取り込めます。
- Excelの行数制限(104万行)を実質的に突破: Power Queryはデータモデルとしてデータを保持するため、Excelのシートの行数制限を超えた大量のデータも処理・結合できます(最終的な出力はExcelの行数制限に準じますが、データモデル内での処理は可能です)。
どんな時に便利?(具体的な例)
- 毎月、複数のExcelファイルからデータを集計している:
- 各月の売上ファイルがバラバラになっている場合でも、フォルダ指定でまとめて読み込み、一つのテーブルに集計できます。
- VLOOKUP関数を何重にも使ってデータを結合している:
- Power Queryの「マージ」機能を使えば、複数のテーブルを簡単に結合でき、VLOOKUPの記述ミスやパフォーマンスの問題を解消できます。
- CSVファイルをExcelで開くと文字化けしたり、日付が正しく認識されない:
- Power QueryでCSVを読み込めば、データ型を適切に変換して取り込めます。
- Webサイトの公開データを定期的に取得したい:
- Power QueryでWebサイトの表を読み込み、自動で更新するように設定できます。
- データに不要な行や列が多く、毎回手作業で削除している:
- Power Queryで一度削除手順を設定すれば、次からは自動で削除されます。
- データの表記ゆれ(例:「株式会社」と「(株)」)を統一したい:
- 「値の置換」機能などで簡単に修正でき、次回以降も自動で適用されます。
Power Queryの起動方法
Excelのバージョンによって少し異なりますが、基本的には「データ」タブの中に「データの取得と変換」というグループがあります。
- 「テーブルまたは範囲から」: Excelシート上のテーブルや範囲をPower Queryに取り込む
- 「テキスト/CSVから」: CSVファイルを取り込む
- 「Webから」: Webサイトのデータを取得する
- 「ファイルから」 / 「データベースから」 など、様々なデータソースを選択できます。
データを取り込むと「Power Queryエディター」という別のウィンドウが開きます。ここでデータの加工を行います。
Power Queryは一度使い始めると、Excelでのデータ処理の考え方がガラッと変わるほどのインパクトがあるツールです。ぜひ、ご自身のデータで試してみてください。
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