ブラジル、リオデジャネイロにそびえる「コルコバードの丘」は、その頂上に立つ巨大なキリスト像とともに、街の象徴であり、世界中から観光客が訪れる名所です。
コルコバードの丘の歴史
- 丘の形成と名称: コルコバードの丘は、リオデジャネイロ市南部にある標高710mの岩山です。ポルトガル語で「せむし男」を意味する「Corcovado」という名がつけられており、その独特の形状から来ています。
- キリスト像の構想と建設:
- 19世紀後半には、この丘に宗教的なモニュメントを建てる構想が持ち上がりました。
- 本格的に計画が動き出したのは1920年代に入ってからです。1922年のブラジル独立100周年を記念して、カトリック教会が中心となり、キリスト像の建設プロジェクトが開始されました。
- 資金は主にブラジルのカトリック教徒からの寄付によって賄われました。
- 像のデザインはブラジル人エンジニアのエイトル・ダ・シルバ・コスタ、彫刻はフランス人彫刻家のポール・ランドフスキが担当しました。
- 像自体はフランスで製作され、分解された状態でブラジルに運ばれ、現地で組み立てられました。
- 約9年間の建設期間を経て、1931年10月12日に完成しました。
- 世界遺産への登録: 2012年には、「リオデジャネイロ:山と海の間のカリオカの景観」の一部として、コルコバードの丘とその頂上のキリスト像を含むリオデジャネイロの景観がユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。これは、自然と人工の景観が一体となって文化的な価値を形成していることが評価されたものです。
- 新・世界七不思議への選定: 2007年には、世界中のインターネット投票によって選ばれる「新・世界七不思議」の一つにも選ばれました。他の選定された建造物が比較的古いものであるのに対し、コルコバードのキリスト像は20世紀に建造された比較的新しい建造物であることが特徴です。
コルコバードの丘とキリスト像の具体的な特徴
- 「コルコバードのキリスト像」(Cristo Redentor):
- 規模: 台座の高さが約8m、像本体の高さが約30mで、合計約38mの高さがあります。左右に広げられた両手は28mにも及び、重さは635トンにもなります。
- デザイン: 両腕を真横に広げた姿は、十字架を彷彿とさせ、街を抱擁しているかのように見えます。これは、ブラジルの人々を包み込み、守護するという意味合いが込められています。
- 宗教的シンボル: ブラジルはキリスト教徒が人口の8割以上を占めるため、このキリスト像はリオデジャネイロのみならず、ブラジル全体のキリスト教のシンボルとして非常に重要な意味を持っています。
- 内部: 像の内部には小さな礼拝堂があり、約150人ほど収容できます。
- ライトアップ: 夜間にはライトアップされ、その神秘的な姿はリオデジャネイロの街のどこからでも見ることができます。プロジェクションマッピングが行われることもあり、特別なメッセージが投影されることもあります。
- 絶景の展望台: 標高710mの頂上にある展望台からは、リオデジャネイロの市街地、美しい海岸線(コパカバーナ海岸、イパネマ海岸など)、奇岩として知られるポン・ヂ・アスーカル、ロドリゴ・デ・フレイタス湖、そして遠くには世界最大級のサッカー場マラカナンスタジアムなど、リオデジャネイロの主要な観光スポットを一望できます。特に、海と山、青と緑が織りなすコントラストは、まさに絶景です。
- アクセス:
- 頂上へは登山電車(コルコバード鉄道)を利用するのが一般的です。この登山電車は、チジュッカ国立公園内を走り、豊かな自然を車窓から楽しむことができます。
- 途中の駅ではサンバ隊が乗り込み、演奏で乗客を楽しませてくれることもあります。
- 一般車両の乗り入れは途中で規制されており、マイクロバスに乗り換える必要があります。
- 登山道もありますが、治安上の理由から推奨されていません。
- チジュッカ国立公園: コルコバードの丘一帯は「チジュッカ国立公園」の中に位置しています。この広大な森林公園は、かつてコーヒー農園として開拓された後、大規模な植林プロジェクトによって再生された世界でも珍しい都市型森林公園です。絶滅危惧種を含む多様な植物や動物が生息しています。
コルコバードの丘は、その歴史的な背景、壮大なキリスト像、そして息をのむような絶景で、リオデジャネイロの魅力を凝縮した場所と言えるでしょう。
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