我が国における雇用形態の二極化:現状と課題
1. 二極化の現状
近年、我が国では正規雇用と非正規雇用の格差が拡大し、雇用形態における二極化が深刻化しています。
統計に見る二極化
- 非正規雇用労働者の割合増加: 2022年における非正規雇用労働者の割合は36.9%と、過去最高を記録しています(総務省「労働力調査」)。
- 男女間の格差: 女性の非正規雇用労働者の割合は54.8%と、男性の22.2%を大きく上回っています。
- 年齢層間の格差: 15~24歳の非正規雇用労働者の割合は62.8%と、65歳以上の14.6%を大きく上回っています。
- 低賃金: 非正規雇用労働者の平均年収は242万円と、正規雇用労働者の平均年収657万円の約4分の1です(厚生労働省「賃金構造統計調査」)。
- 不安定な雇用: 非正規雇用労働者の契約期間は短く、雇用が不安定な状況です。
二極化の背景
- 経済のグローバル化・IT技術の進歩: 経済のグローバル化やIT技術の進歩により、企業は労働市場の柔軟性を求めており、非正規雇用労働者を活用しやすくなっています。
- バブル経済崩壊後の雇用調整: バブル経済崩壊後、企業は雇用調整を行い、その多くが非正規雇用労働者となりました。
- 社会構造の変化: 少子高齢化や晩婚化・未婚化の進展により、女性の労働力率が向上し、非正規雇用労働者として働く女性が増加しています。
二極化の影響
- 所得格差の拡大: 非正規雇用労働者の低賃金により、所得格差が拡大しています。
- 貧困問題の深刻化: 非正規雇用労働者の中には、貧困状態にある人が少なくありません。
- 消費の低迷: 所得格差の拡大により、消費が低迷する恐れがあります。
- 社会不安の増大: 二極化が進むと、社会不安が増大する恐れがあります。
2. 政府の取り組み
政府は、二極化の解消に向け、以下の取り組みを進めています。
- 同一労働同一賃金の実現: 2020年4月に施行された改正労働基準法により、同一労働同一賃金原則が義務化されました。
- 非正規雇用労働者の処遇改善: 最低賃金の引き上げや、有期雇用労働者の無期雇用転換促進など、非正規雇用労働者の処遇改善に向けた取り組みを進めています。
- ワークライフバランスの推進: 育児・介護休暇制度の拡充や、テレワークの推進など、ワークライフバランスの推進に向けた取り組みを進めています。
3. 課題と今後の展望
二極化の解消には、政府だけでなく、企業や労働組合、国民一人ひとりの理解と協力が必要です。
課題
- 同一労働同一賃金の徹底: 法改正により同一労働同一賃金原則が義務化されましたが、徹底が課題です。
- 非正規雇用労働者の処遇改善: 最低賃金の引き上げや、有期雇用労働者の無期雇用転換促進など、非正規雇用労働者の処遇改善に向けた取り組みをさらに進める必要があります。
- ワークライフバランスの推進: 育児・介護休暇制度の拡充や、テレワークの推進など、ワークライフバランスの推進に向けた取り組みをさらに進める必要があります。
- 意識改革: 正規雇用と非正規雇用の格差に対する意識改革が必要です。
今後の展望
二極化の解消は、簡単ではありませんが、政府、企業、労働組合、国民一人ひとりが協力することで、より良い社会を実現することが可能であると考えられます。
参考資料
- 厚生労働省「労働力調査」: https://www.stat.go.jp/data/roudou/
- 厚生労働省「賃金構造統計調査」: https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
- 総務省「労働施策白書」: https://www.soumu.go.jp/
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