坪内 稔典(つぼうち ねんてん)は、日本の著名な俳人であり、国文学者です。
経歴と人物像
1944年愛媛県生まれ。立命館大学文学部日本文学科を卒業後、同大学院文学研究科修士課程を修了しました。その後、園田学園女子大学助教授、京都教育大学教授、京都教育大学教育学部附属桃山中学校校長、佛教大学教授などを歴任し、現在は京都教育大学名誉教授でもあります。
高校時代から俳句の道を志し、伊丹三樹彦に師事しました。日本近代文学の研究者としては、特に正岡子規に関する著作や論考が多く、その研究の第一人者として知られています。
俳句の特徴と作風
坪内稔典の俳句は、その遊び心と軽妙なリズム感、そして**口誦性(口で唱えやすいこと)**を重んじる姿勢が特徴です。
口誦性(こうしょうせい)と片言性(かたことせい): 覚えやすく、どこでも口にできる「口誦性」と、短い言葉ながらもその意味が深く広がり、簡単には言い尽くせない「片言性」を自身の俳句の本質としています。
ユニークな表現: 伝統俳句の枠にとらわれず、「うふふふふ」といった擬音語を取り入れるなど、日常の言葉やユーモアを大胆に導入することで、俳句の可能性を広げました。
現代俳壇への影響: そのナンセンスにも聞こえる言葉遣いは、現代俳壇に大きな影響を与え、「ニューウェーブ俳句」や「広告コピー風」とも評され注目を集めました。
代表句と主な著作
坪内稔典の代表的な俳句としては、小学校の教科書にも掲載された**「三月の甘納豆のうふふふふ」**や、「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ」などが挙げられます。
主な著作には、句集『落花落日』、『猫の木』、『ヤツとオレ』、評論『俳句のユーモア』など多数あります。また、正岡子規や夏目漱石に関する研究書も多く、『正岡子規』、『子規のココア漱石のカステラ』、『季語集』などがあります。
メディアにも多数出演し、毎日新聞朝刊の「季節のたより」執筆や、NHKテレビ「俳句王国」の主催なども務めています。
坪内稔典は、アカデミックな視点と、俳句への自由でユーモラスなアプローチを兼ね備えた、現代俳句界を代表する重要な人物の一人と言えるでしょう。
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