Jリーグが目指す「まちなかスタジアム」は、単なるサッカー観戦施設にとどまらず、地域の活性化や社会課題の解決に貢献する多機能複合型の施設です。具体的には、以下のような目的を目指しています。
1. 中心市街地の活性化と賑わいの創出
集客力の向上: 試合開催日はもちろんのこと、試合のない日もイベントや商業施設、オフィス、ホテルなどを併設することで、年間を通して多くの人が集まる拠点となります。
公共交通機関の利用促進: 駅や中心市街地からのアクセスが良い場所に建設することで、公共交通機関の利用を促し、交通渋滞の緩和にも貢献します。
周辺商業施設との連携: スタジアム来場者が周辺の飲食店や商店を利用することで、地域全体の消費を喚起し、経済効果を生み出します。
まちのシンボル化: 地域住民にとっての誇りとなるランドマークとして、シティセールスにも貢献します。
具体例:
エディオンピースウイング広島(サンフレッチェ広島): 広島都心部に隣接し、試合前後で市内中心部での飲食や散策を楽しめるように設計されています。スタジアムと広場エリアが繋がり、様々な世代が集う「都会のオアシス」を目指しています。
長崎スタジアムシティ(V・ファーレン長崎): JR長崎駅から徒歩圏内に位置し、ホテル、温浴施設、スーパーマーケット、ショッピングモール、オフィスなどを併設。試合日以外も開放され、コンコースでのランニングなど、多様な利用が可能です。
2. 地域コミュニティの形成とスポーツ文化の醸成
交流拠点の提供: サッカー観戦だけでなく、イベントスペースや広場として、地域住民が交流できる場を提供します。
スポーツ文化の普及: サッカースクールやスポーツイベントの開催を通じて、地域におけるスポーツ文化の発展に貢献し、子供たちの健全な育成を促します。
健康増進: ランニングコースやフィットネス施設などを併設し、地域住民の健康増進に寄与します。
多様な利用機会の創出: アカデミー施設、展示スペース、コンベンション機能などを備え、サッカーファン以外も楽しめる施設を目指します。
具体例:
アントラーズスポーツクリニック(鹿島アントラーズ): カシマサッカースタジアムに開院し、プロスポーツ選手が受けている高度な医療を地域住民にも提供しています。
アオーレ長岡(新潟アルビレックスBBのホームアリーナ、Jリーグのスタジアムではないが多目的利用の好事例): 自由度の高い空間と多様な機能の複合化により、コンサートやイベントなど多目的な利用を促進しています。
3. 多機能複合による経営の安定化と地域課題の解決
非試合日の収益確保: 多様な施設を併設することで、試合開催日以外の稼働率を高め、安定的な収益を確保します。これは、クラブ経営の安定化に繋がり、ひいては地域に根差した活動を継続する基盤となります。
防災拠点としての機能: 災害時には避難場所や物資の供給拠点となるなど、地域防災に貢献する機能を持つことも想定されています。
地域雇用の創出: スタジアムの運営や周辺施設の活性化により、新たな雇用を生み出します。
このように、Jリーグの「まちなかスタジアム」は、サッカーを核としながらも、地域に深く根差し、経済、文化、社会貢献といった多岐にわたる側面から、より良いまちづくりを実現することを目指しています。
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