認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)は、心の問題やストレスを抱える人が、自分の認知(ものの捉え方や考え方)と行動に働きかけることで、気持ちを楽にし、問題解決能力を高める心理療法です。
簡単に言うと、「ネガティブな気持ちは、出来事そのものではなく、その出来事に対する自分の受け止め方によって生まれる」という考えに基づいています。
認知行動療法の基本的な考え方
認知行動療法では、私たちの心と体の反応を以下の4つの要素に分けて考えます。これらの要素は互いに影響し合い、悪循環を生み出すことがあります。
出来事: 日常で起こる客観的な事実(例: 友人に挨拶したが無視された)
認知: 出来事に対する自分の捉え方や考え(例: 「嫌われているんだ」「自分が何か悪いことをしたのかな」)
気分・感情: 認知によって引き起こされる感情(例: 落ち込み、不安、悲しみ)
行動: 感情の結果として起こす行動(例: その友人との接触を避けるようになる)
認知行動療法では、この悪循環の「認知」と「行動」に焦点を当てて、より柔軟でバランスの取れたものに変えていくことを目指します。
具体的な進め方(例)
認知行動療法は、通常、カウンセラーや医師と対話しながら進めます。
問題の整理: まず、自分がどのような出来事でつらいと感じるのか、その時の感情や行動を具体的に記録します。
認知の歪みに気づく: 記録した内容を見返し、自分の考え方に偏りや歪みがないかを探します。例えば、「無視された」という出来事に対して「絶対に嫌われている」と決めつけていないか、他の可能性(例: 友人が何か考え事をしていた、聞こえなかっただけ)はないかを考えます。この「決めつけ」などの偏った考え方を自動思考と呼びます。
バランスの取れた考えを探す: 自動思考に代わる、より現実的でバランスの取れた考え方を複数見つけます。これにより、一つのネガティブな考えにとらわれることから解放されます。
行動を変える: 認知が変わると、行動も変わります。たとえば、友人との接触を避けるのではなく、勇気を出してもう一度話しかけてみる、というような具体的な行動目標を立てて実行します。
このプロセスを通じて、自分自身の「考え方のクセ」に気づき、それを修正するスキルを身につけていくことで、ストレスにうまく対処できるようになることを目指します。最終的には、治療者なしでも自分でこのスキルを使いこなせるようになることが目標です。
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