行政における「オムニチャネル」とは、住民が行政サービスを利用する際に、オンライン(Webサイト、SNS、チャットボット、オンライン申請など)、オフライン(窓口、電話、郵送など)といったあらゆる接点(チャネル)をシームレスかつ一貫性のある形で連携させ、住民にとって最も利便性の高いサービス提供を目指す考え方、またはその仕組みを指します。
民間企業におけるオムニチャネルが「顧客の購買体験の向上」を主眼としているのに対し、行政におけるオムニチャネルは**「住民の利便性向上」と「行政サービスの効率化・最適化」**を目的としています。
行政におけるオムニチャネルの主な意味と目的
住民の利便性向上と満足度向上:
場所や時間にとらわれないアクセス: 住民は、自分の都合の良いチャネル(自宅のPCからオンライン申請、スマートフォンアプリ、近くのコンビニでの証明書発行、窓口訪問など)を選んでサービスにアクセスできます。
一貫した情報提供と手続き: どのチャネルを利用しても、同じ情報にアクセスでき、手続きの状況が共有されるため、住民は途中でチャネルを変更してもスムーズに手続きを進めることができます。例えば、Webで申請を始めたが途中で不明点があり、電話で問い合わせた際に、オペレーターがWebでの入力状況を把握している、といった状況です。
待時間の短縮とストレス軽減: オンラインでの事前入力や予約システムなどにより、窓口での待時間を削減し、住民の負担を軽減します。
行政サービスの効率化・最適化:
業務の標準化と効率化: 複数のチャネルからの情報を一元管理することで、業務プロセスの標準化や自動化を進め、行政職員の負担を軽減します。
データの一元管理と活用: 住民情報や手続き履歴などをチャネル横断で一元的に管理し、データを分析することで、住民ニーズの把握やサービス改善に役立てます。
リソースの最適配置: どのチャネルにどのような問い合わせが多いかを把握し、人員配置やシステム投資の最適化を図ることができます。
コスト削減: 窓口対応の削減やペーパーレス化などにより、運営コストの削減につながる可能性があります。
行政におけるオムニチャネルの具体例
マイナンバーカードの活用: 自宅からのオンライン申請、コンビニでの証明書取得、予約システムとの連携など、マイナンバーカードを基軸とした様々なチャネルでのサービス提供。
オンライン申請・届出: 住民票の写しや納税証明書などの申請をWebサイトで行えるようにし、進捗状況もオンラインで確認できるようにする。
チャットボット・AIによる問い合わせ対応: 住民からのよくある質問に24時間対応できるチャットボットを導入し、複雑な問い合わせは有人対応にスムーズに引き継ぐ。
電子申請と窓口・郵送の連携: 電子申請で入力した情報を、窓口での手続きや郵送申請にも活用できるようにする。
プッシュ通知やメールによる情報提供: 住民が申請した手続きの進捗状況や、必要な情報の変更などを、登録されたメールアドレスやアプリを通じて自動で通知する。
移動窓口サービスの提供: 高齢者や遠隔地に住む住民のために、移動式の窓口車両で行政サービスを提供する(オンライン連携も含む)。
行政におけるオムニチャネルは、デジタル化が進む現代において、住民にとってより身近で便利な行政サービスを提供し、同時に行政側の業務効率を高めるための重要な戦略となっています。
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