2025年8月19日火曜日

石川県能登地方に伝わる麻の織物 能登上布について具体的に解説してください。

 能登上布は、石川県能登地方に伝わる伝統的な麻織物で、特に「蝉の羽」と例えられるほどの薄さ軽さ、そして独特の張り感とシャリ感が特徴です。日本の五大上布の一つに数えられ、主に夏用の高級着物として知られています。


特徴

能登上布の最大の特徴は、涼しげな風合いと緻密な絣(かすり)模様です。

  • 素材と風合い:

    原料には、リネンではなく日本古来の苧麻(ちょま)が使用されます。この糸を手で紡ぎ、手織りで織り上げることで、独特の透け感と光沢が生まれます。肌触りはひんやりとしており、汗をかいても肌にまとわりつかず、夏の着物として最適です。洗うほどに柔らかくなり、風合いが増すため、親子三代にわたって使えるほど丈夫だと言われています。

  • 絣模様:

    能登上布は、複雑で精巧な絣模様が特徴です。特に、経糸と緯糸の柄を正確に合わせる技術は高度な熟練を要します。板締めや櫛押し捺染といった独自の染色技法によって、十字絣や亀甲絣などの伝統的な柄が作られます。これらの絣模様は、能登の風土を映した落ち着いた色合いが特徴です。


歴史

能登上布の歴史は古く、約2000年前に崇神天皇の皇女がこの地に機織りを教えたのが始まりと伝えられています。江戸時代に近江(滋賀県)の技術が導入されて発展し、昭和初期には全国一の生産量を誇るようになりました。しかし、現在は着物需要の減少により、伝統を受け継ぐ織元は一軒のみとなっています。能登上布は昭和35年に石川県の無形文化財に指定されています。


用途と現代の取り組み

能登上布は、主に夏用の着物や帯として使われます。その上質な質感と涼しさから、夏の高級礼装としても着用されます。また、近年ではストール、バッグ、名刺入れなどの小物やファッションアイテムにもその技術が応用され、現代のライフスタイルに合わせた製品が作られています。これは、伝統を守りつつ、新しい需要を開拓する取り組みの一環です。

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