それは本当に不思議で、そして感動的な現象ですよね!赤ちゃんは周りの大人が話す言葉を、まるでスポンジが水を吸い込むように自然に習得していきます。この驚くべき言語習得の背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
1. 生まれながらの能力(生得説):
- 言語獲得装置(LAD: Language Acquisition Device)の存在: ノーム・チョムスキーという言語学者は、人間には生まれつき言語の基本的な構造や規則(普遍文法)を理解する能力が備わっていると考えました。これは、特定の言語を学ぶための「下地」のようなものです。
- 脳の特殊な機能: 赤ちゃんの脳は、言語情報を処理するのに特化した領域が発達していくと考えられています。周りの音の中から言語の音(音素)を認識したり、文の構造を無意識に分析したりする能力が備わっていると言われています。
2. 環境からの影響(経験説):
- インプットの重要性: 周りの大人が話す言葉を聞くことが、言語習得の最も重要な要素の一つです。赤ちゃんは、繰り返し聞く言葉の音やリズム、そしてそれが指す意味を少しずつ結びつけていきます。
- 親の働きかけ: 親や養育者は、赤ちゃんに対して特別な話し方をすることが多いです。ゆっくりと、高い声で、短いフレーズを繰り返し使う(マザーグースなど)。これは「養育者語りかけ(Caregiver Speech)」と呼ばれ、赤ちゃんが言葉を理解しやすくする効果があると考えられています。
- コミュニケーションの欲求: 赤ちゃんは、自分の欲求を伝えたり、周りの人と繋がりたいという強い欲求を持っています。言葉は、そのための強力なツールとなるため、積極的に習得しようとする動機になります。
- フィードバック: 大人が赤ちゃんの言葉に反応したり、間違った発音を修正したりするなどのフィードバックも、言語発達を促す上で重要です。
3. 相互作用:
最近の研究では、生まれながらの能力と環境からの影響は、互いに独立しているのではなく、複雑に影響し合いながら言語習得が進んでいくと考えられています。
赤ちゃんが言葉を覚えていく段階の例:
- 泣き声(生後すぐ): 空腹や不快などを伝える最初のコミュニケーション手段。
- クーイング(生後2-3ヶ月頃): 「あー」「うー」といった、喉を使った柔らかい母音のような声を出す。
- 喃語(生後6ヶ月頃-1歳頃): 「ばばば」「まーまー」といった、子音と母音が組み合わさった音を出す。これは、様々な音を試している段階と考えられています。
- 一語文(1歳前後): 意味のある単語を話し始める。「まんま」「わんわん」など。
- 二語文(1歳半-2歳頃): 単語を2つ組み合わせて話す。「ママ、きた」「ブーブー、ない」など。
- 多語文(2歳以降): 徐々に複雑な文を話せるようになる。
赤ちゃんは、周りの世界との関わりの中で、音、意味、文法といった言語の様々な側面を、驚くべきスピードで、そして誰に教わるでもなく自然に習得していくのです。これは、人間の持つ素晴らしい能力の一つと言えるでしょう。
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