高野山のふもとに位置する和歌山県橋本市のお盆のしきたりは、一般的な日本の風習に加え、高野山真言宗の影響や地域独自の風習が色濃く反映されている点が特徴です。
1. お盆の期間と一般的な風習
橋本市でも、お盆は主に8月13日〜16日に行われるのが一般的です。
13日(迎え盆): 夕方になると、ご先祖様の霊を迎えるために迎え火を焚きます。家の入口や門前で小さな焚き火をしたり、提灯を灯したりして、ご先祖様が迷わず帰ってこられるように目印を作ります。
14日・15日(中日): 仏壇や精霊棚にお供え物をし、お経をあげてご先祖様を供養します。特に、茄子ときゅうりに割り箸を刺して作る「精霊馬(しょうりょううま)」や「精霊牛(しょうりょううし)」を作り、霊の乗り物としてお供えする風習は全国的にも見られます。
16日(送り盆): ご先祖様の霊を送り返すために送り火を焚き、お供え物などを川に流す「精霊流し」を行う地域もあります。
2. 橋本市ならではの風習と行事
橋本市のお盆は、地域ごとの特色ある行事も重要な要素となっています。
橋本川での燈籠流し: 橋本市の中心部を流れる橋本川では、お盆の送り火として**「橋本燈籠流し」**が開催されます。これは、先祖の御霊を供養するために、家内安全や世界平和などの願いを込めた燈籠を川に流す幻想的な行事です。かつて花火大会と合同で行われていましたが、近年になって地元のお寺が中心となり復活し、今では地域の重要な風物詩となっています。
「野の送り火」: 橋本市野地区に伝わる「野の送り火」は、無形民俗文化財にも指定されている貴重な行事です。「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えながら行列を組み、川原で経木(きょうぎ)を燃やして先祖を供養します。
各地区の盆踊り: お盆の時期には、市内各地区の公民館などが主催する納涼盆踊り大会が開催され、多くの住民が参加します。これは、先祖の霊を迎え、共に楽しむ伝統的な風習です。
3. 高野山の影響
橋本市は高野山のふもとに位置しているため、高野山真言宗の信仰が生活に深く根付いています。これはお盆のしきたりにも影響を与えています。
お寺のお盆行事: 多くの家庭では、お盆の期間中に菩提寺の僧侶が各家庭を回って読経する**「棚経参り」**が行われます。
高野山の「ろうそくまつり」: 橋本市からアクセスが良い高野山では、お盆の13日の夜に「ろうそくまつり」が行われます。奥之院への参道約2kmにわたって無数のろうそくが灯され、先祖の霊を供養する厳粛で幻想的な行事です。橋本市民の中にも、この高野山の行事に足を運ぶ人が少なくありません。
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