心理学における**二極性思考(dichotomous thinking)**とは、物事を極端な二つのカテゴリーに分けて考える認知の歪みの一つです。「白か黒か」「全か無か」「成功か失敗か」といったように、中間やグレーゾーンを認識せずに、極端な見方をしてしまう思考パターンです。
二極性思考の具体例
人間関係:
「あの人は私に少し冷たかったから、もう絶対に信用できない。」
「この人は私の味方か、敵のどちらかだ。」
自己評価:
「完璧にできなかったのだから、今回のプロジェクトは完全に失敗だ。」
「小さなミスをした。私はもうダメな人間だ。」
仕事や学業:
「このプレゼンが成功すれば全てうまくいくし、失敗したら私のキャリアは終わりだ。」
「100点を取れなかったら、勉強する意味がない。」
特徴と背景
二極性思考を持つ人は、以下のような特徴が見られます。
完璧主義: 完璧を求めすぎるため、少しでも不完全な点があると、全体を失敗と見なしてしまいます。
柔軟性の欠如: 状況に応じて考え方を変えたり、多角的に物事を捉えたりするのが苦手です。
強い感情的反応: 些細な出来事でも、極端な思考に結びつくため、落ち込みやすくなったり、怒りを感じやすくなったりします。
この思考パターンは、幼少期の経験や人格特性に起因することがあるとされています。特に、自己評価が不安定な人や、境界性パーソナリティ障害(BPD)などの特定の心理的問題を持つ人に見られることが多いです。
克服方法
二極性思考を改善するためには、意識的に「グレーゾーン」を認識する練習が必要です。
思考のパターンを自覚する:
まず、自分が二極性思考に陥っていることを認識することが第一歩です。「これは全か無かの考え方かな?」と自問自答してみましょう。
代替案を探す:
「完全に失敗」という思考が浮かんだら、**「本当にそうか?」**と問いかけます。
「良かった点も少しはあった」「全てがダメだったわけではない」といった、中間の視点を探してみましょう。
言葉を変える:
「いつも」「絶対に」「全て」といった極端な言葉を、「時々」「~の部分は」といったより穏やかな言葉に置き換えてみましょう。
「私は絶対に失敗する」→「今回のプレゼンで、一部うまくいかないかもしれない部分もある」
認知行動療法(CBT):
専門家の指導のもとで、非適応的な思考パターンを特定し、より現実的でバランスの取れた思考に置き換える訓練をします。これは、二極性思考の克服に特に有効なアプローチです。
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