2025年9月18日木曜日

境界性パーソナリティ障害(BPD: Borderline Personality Disorder)とは

 境界性パーソナリティ障害(BPD: Borderline Personality Disorder)は、感情、対人関係、自己像、行動の不安定さを特徴とする、精神障害の一つです。英語の「Borderline」が示すように、かつては神経症と精神病の境界に位置すると考えられていました。


主な症状

BPDの診断基準となる9つの症状のうち、5つ以上が当てはまると診断されます。症状は一見矛盾しているように見えたり、極端に現れたりするのが特徴です。

  1. 見捨てられることへの強い恐怖: 友人や恋人、家族に捨てられることに対して、過剰なまでに不安を感じ、しがみつくような行動を取ります。

  2. 不安定で激しい対人関係: 相手を「理想化」する一方で、少しでも期待を裏切られると「こき下ろす」といった極端な評価の変動(スプリッティング)が見られます。

  3. 自己像の不安定さ: 自分のアイデンティティや価値観が定まらず、「自分は何者なのか」がわからなくなり、空虚感に襲われます。

  4. 自己破壊的な行動: 衝動的な行動(浪費、性行為、薬物乱用、過食)や、自傷行為、自殺企図が頻繁に見られます。

  5. 慢性的な空虚感: 絶えず心にぽっかりと穴が開いたような、満たされない感覚を抱えています。

  6. 不適切な怒り: 些細なことで激しい怒りを感じ、それを抑えきれずに爆発させてしまいます。

  7. 感情の不安定さ: 感情の起伏が激しく、数時間で気分が急激に変化します。

  8. ストレスによる解離症状や妄想: 強いストレス下で、現実感がなくなる(解離)症状や、一時的な妄想的な思考が生じることがあります。


原因と背景

BPDの原因は一つに特定されていませんが、以下の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

  • 遺伝的要因: 家族にBPDの人がいる場合、発症リスクが高まるとされています。

  • 脳機能の障害: 感情や衝動を司る脳の部位(扁桃体や前頭前野)の機能異常が指摘されています。

  • 環境要因: 幼少期の虐待(身体的・性的・精神的)、ネグレクト、不安定な養育環境などのトラウマ体験が、発症の大きなリスク要因となります。


治療法

BPDは治療が難しいとされることもありますが、適切な治療を受ければ症状は大幅に改善されます。

  • 精神療法: BPDの治療の中心となるのが精神療法です。

    • 弁証法的行動療法(DBT): 感情調節、対人関係スキル、苦痛耐性、マインドフルネスを学び、症状を改善するための具体的なスキルを習得します。BPDに最も効果的とされている治療法です。

    • スキーマ療法: 幼少期からの「適応を妨げる思考パターン(スキーマ)」を特定し、健全なものに書き換えることを目指します。

  • 薬物療法: 直接BPDを治す薬はありませんが、抑うつ、不安、衝動性、感情の不安定さといった特定の症状を緩和するために、抗うつ薬や気分安定薬が用いられることがあります。

BPDの診断は専門医が行うべきものであり、自己診断は危険です。もしご自身や周囲の人がこれらの症状に当てはまる場合、専門の医療機関に相談することが重要です。

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