北海道を代表する鳥として知られるクマゲラは、その存在感と生態から「森の医者」とも呼ばれる大型のキツツキです。詳しく具体的に見ていきましょう。
クマゲラとは
- 日本最大のキツツキ: クマゲラは、体長が約46cmにもなる日本最大のキツツキの仲間です。全身が漆黒で、オスは頭頂部全体が鮮やかな赤色、メスは頭の後ろ側だけが赤色という特徴的な羽色をしています。このため、遠くからでも見つけやすいですが、警戒心が強く、間近で観察するのは容易ではありません。
- 生息地: 日本では主に北海道と、北東北地方(青森、秋田、岩手など)の一部に生息しています。北海道では、平野部から山地の様々なタイプの森林(常緑針葉樹林、落葉広葉樹林、針広混交林など)に広く分布していますが、本州ではブナ林に限定される傾向があります。特に、大径木(直径約70cm以上の太い木)のある森林を好みます。
- 国の天然記念物・絶滅危惧種: クマゲラは、国の天然記念物に指定されており、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧II類(VU)」に分類されています。これは、絶滅の危険が増大している種であることを意味します。生息地の減少や森林の分断が、個体数減少の要因と考えられています。
生態・習性
- 食性:
- 主食はアリ: クマゲラの主な餌はアリで、特にムネアカオオアリやトビイロケアリを好んで食べます。倒木や切り株、立木の根元付近などを器用なくちばしでつついてアリを捕食します。一日あたり最大1,000匹ものアリを食べることがあります。
- その他の昆虫や果実も: アリの他に、木の中にいるカミキリムシの幼虫やキクイムシの幼虫なども食べます。冬期には、ツタウルシ、ホオノキ、キハダ、タラノキなどの実も食べることがあります。
- 長い舌: 舌の先にはカギ状の刺があり、木の中にいる昆虫を引っ掛けて引きずり出すことができます。
- 採餌方法:
- 「森の医者」: 木の幹に長方形の大きな穴を開けて餌を探します。この穴を開ける行動が、木に寄生する害虫を駆除する役割を果たすため、「森の医者」と呼ばれることがあります。
- ドラミング: 繁殖期には、木の幹を連続して叩く「ドラミング」を行います。これは、なわばり宣言や異性を引きつけるための求愛行動であり、さえずりのような機能を持っています。雄の方が多く行いますが、雌も行います。
- 繁殖:
- 巣穴: 大木や枯れ木に、縦15cm、横10cmほどの大きな巣穴を自ら掘って巣を作ります。幹の直径が約70cm以上の大径木しか繁殖に利用できません。
- 一夫一妻: 基本的に一夫一妻で、年1回繁殖し、つがい関係は毎年維持されることが多いとされています。オス・メスともに抱卵や育雛(ひなを育てること)、給餌に参加します。
鳴き声
- 「キョーン、キョーン」: クマゲラの鳴き声は非常に特徴的で、よく響く「キョーン、キョーン」という甲高い声で鳴きます。
- 飛行時の鳴き声: 飛行するときには、「コロコロコロコロ…」といった声を出すこともあります。
- ドラミング音: 木を叩くドラミングの音も、遠くまで響き渡り、その存在を知らしめます。
保護活動
クマゲラは、その生息環境である森林の保全が重要であり、各地で保護活動が行われています。
- 生息調査: 個体数のモニタリングや生息状況の調査が行われ、そのデータは保護計画に役立てられます。
- 森林の保全: クマゲラが生息しやすい環境を維持するため、大径木の保全や広葉樹の植栽など、森林の管理が行われています。特に、冬期に積雪が深い地域では、雪に埋もれない立ち枯れ木が重要な餌の供給源となるため、その保全も重要視されています。
- 普及啓発: クマゲラの生態や重要性を一般に知ってもらうための講演会や写真展、観察会なども開催されています。
北海道の豊かな自然の中で、クマゲラはその独特の生態と存在感で、多くの人々を魅了し続けています。その保護は、北海道の豊かな生態系を守る上でも非常に重要な課題となっています。
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