リコーダーの音が出る仕組みは、とてもシンプルながらも科学的な原理に基づいています。フルートやティン・ホイッスルと同じエアリード楽器に分類され、以下の3つの要素が組み合わさって音が発生します。
1. 吹き込まれた息の流れ(エア・ジェット)
まず、演奏者が吹き口(ウィンドウェイ)に息を吹き込みます。この細く狭い隙間を通ることで、空気の流れは非常に速く、層状の流れ(ジェット気流)になります。
2. エッジ(窓の鋭い角)での渦の発生
この高速な空気の流れが、リコーダーの前面にある四角い窓(ラビウム)の、下の鋭い角(エッジ)にぶつかります。この時、空気の流れがエッジに当たって上下に分裂し、カルマン渦と呼ばれる小さな渦が交互に発生します。この渦がエッジの上下を激しく振動させます。
3. 管内の空気の共鳴
このエッジの振動は、まだか細い「エッジトーン」という音ですが、これがリコーダーの筒状の管(共鳴管)の中の空気を振動させ、特定の周波数の音波を増幅させます。これが「共鳴」です。
4. 指穴で音の高さを変える原理
リコーダーの音の高さを変える鍵は、この共鳴の原理にあります。
指穴をすべて閉じる場合:
管の中の空気が、吹き口から足部管(一番下の端)まで全て振動します。このため、共鳴する空気の柱の長さが最も長くなり、最も低い音(ソプラノリコーダーのド)が出ます。
指穴を開ける場合:
指穴を開けると、その開けた穴が音の波長を決める「終点」になります。つまり、管の有効な長さが短くなります。
例えば、「レ」の音を出すために人差し指を離すと、共鳴する空気の柱は吹き口から最初の開いた穴(人差し指の穴)までとなります。管が短くなることで、空気の振動の周波数が高くなり、より高い音が出るのです。
この「管の長さを変えて共鳴させる」という原理は、フルートやオーボエなどの他の木管楽器と共通していますが、リコーダーは指穴を開けることで物理的に共鳴する長さを変える点が特徴的です。
リコーダーの音色の秘密
リコーダーの音色は、単に円柱の管で音を出しているわけではありません。実は、多くのリコーダーは、吹き口から先に向かってわずかに細くなる「逆円錐形」の内径をしています。
これにより、特定の倍音(ハーモニクス)が強調され、単調ではない、より豊かで温かみのある音色を生み出しています。また、木材やプラスチックといった素材の違いも音色に影響を与えます。
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