2025年9月10日水曜日

学校などで採用されている ガスエアコンについて、 具体的に解説してください。

 学校などで採用されている「ガスエアコン」とは、正式にはガスヒートポンプエアコン(GHP)といい、エアコンの心臓部であるコンプレッサーを、電気モーターではなくガスエンジンで動かす空調システムです。

一般的な電気式エアコン(EHP)が電気を動力源とするのに対し、GHPはガスを主要なエネルギー源とすることで、特に大規模な建物での消費電力を大幅に削減できるという特徴があります。


仕組み

GHPの基本的な冷暖房の仕組みは、EHPと同じ「ヒートポンプサイクル」を利用しています。

  1. **冷媒(フロンガスなど)**が液体から気体に蒸発(気化)する際に周囲の熱を奪う性質と、気体から液体に凝縮(液化)する際に熱を放出する性質を利用します。

  2. 冷房時は、室内の熱を冷媒に乗せて室外へ運び、暖房時は、室外の熱を室内に取り込みます。

  3. この冷媒を強制的に循環させ、圧縮・膨張を繰り返すための「コンプレッサー」の駆動に、ガスエンジンが使われています。

このガスエンジンがコンプレッサーを動かすことで、EHPに比べて消費電力を約10分の1に抑えることができます。


学校で採用される主な理由とメリット

学校でGHPが採用される背景には、以下のような特有のメリットがあります。

  • 電力基本料金の低減: 学校は夏場のエアコン使用時に電力消費量が急増します。日本の電力料金システムでは、過去1年間の最大使用電力(デマンド)に応じて基本料金が決まるため、GHPで夏のピーク電力を抑えることで、年間の電気料金を大幅に削減できます。

  • 災害時の強さ: GHPはガスを主な動力源とするため、停電時でもガス供給さえあれば空調を稼働させることができます。これは、災害時に学校が避難所となることを考えると、非常に大きなメリットです。

  • 暖房の立ち上がりが速い: ガスエンジンの運転時に発生する排熱を暖房に利用できるため、外気温が低い日でも安定してパワフルな暖房能力を発揮し、素早く部屋を暖めることができます。また、EHPに発生する「霜取り運転」が不要になるため、連続して快適な暖房を提供できます。

  • 受変電設備の容量負担軽減: 消費電力が少ないため、既存の受電設備を大規模に増設することなく、エアコンを導入できる場合があります。


デメリット

GHPにもいくつかのデメリットがあります。

  • 初期導入コストが高い: 本体価格がEHPよりも高価な場合が多く、導入時の費用がかさみます。

  • 定期的なメンテナンスが必要: 動力源がガスエンジンであるため、自動車のようにエンジンオイルやプラグの交換といった定期的なメンテナンスが必須となります。これには手間と費用がかかります。

  • 設置場所の制約: 排気ガスや運転音、振動などが発生するため、EHPに比べて室外機の設置場所に制約を受けることがあります。

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