データサイエンティストが行う業務は、組織の課題解決や価値創出のためにデータを活用する一連のプロセスであり、主に以下の流れで進められます。
データサイエンティストの業務プロセス
データサイエンティストの業務は、一般的に「ビジネス理解と問題定義」から始まり、「モデルの運用・改善」で終わる、PDCAサイクルに似た循環的な流れをたどります。
1. ビジネス理解と問題定義(Business Understanding & Problem Definition)
この段階が最も重要で、ビジネス側の担当者と緊密に連携します。
課題の特定と目的設定: 「売上を増やしたい」「コストを削減したい」といった抽象的なビジネス上の課題に対し、「どのデータを使い、何を予測・分析すれば、その課題が解決できるか」を具体的に定義します。
例: 「客単価が伸び悩んでいる」という課題に対し、「顧客の購買履歴データから、次に購入する可能性が高い商品を予測するレコメンドモデルを開発し、クロスセルを促進する」と定義する。
評価指標の決定: 開発するモデルや分析結果の成否を測るためのKPI(Key Performance Indicator)を決定します。
2. データ収集と加工(Data Acquisition & Preparation)
問題解決に必要なデータを収集し、分析に適した形に整えます。
データ収集: 社内データベース、ログデータ、センサーデータ、外部データなど、必要な情報を集めます。
データクレンジング: データの欠損値処理、外れ値の検出・対応、表記揺れの統一など、データの品質を向上させます。
特徴量エンジニアリング(Feature Engineering): 分析やモデルの精度を高めるために、既存のデータから新たな有用な特徴量(変数)を作り出します。
例: 顧客の「最終購入日」と「購入頻度」から「休眠顧客化のリスク」という新しい特徴量を作る。
3. データ分析とモデル開発(Data Analysis & Modeling)
データを分析し、機械学習モデルを構築する核となる段階です。
探索的データ分析(EDA: Exploratory Data Analysis): 統計的手法や可視化を用いてデータの傾向や特徴、変数間の関係性などを把握し、問題解決のヒントを得ます。
アルゴリズムの選択とモデル開発: 課題(分類、回帰、クラスタリングなど)に応じて最適な機械学習アルゴリズムを選択し、モデルを構築(トレーニング)します。
モデルの評価とチューニング: 構築したモデルを検証データで評価し、ビジネス上の目的に合った精度を達成できるようにパラメータを調整(ハイパーパラメータチューニング)します。
4. 結果の解釈と伝達(Interpretation & Communication)
開発したモデルや分析結果を、ビジネス上の意思決定に繋げるための段階です。
モデルの解釈: モデルがなぜそのような予測や判断を下したのか(例:どの特徴量が予測に最も寄与したか)を分析し、ビジネス的な示唆を引き出します。
レポートと可視化: 専門知識のないステークホルダー(経営層や現場部門)にも理解できるように、分析結果をグラフやダッシュボードで分かりやすく可視化し、報告します。
アクションプランの提案: 分析結果に基づいて、具体的な次のアクション(例:プロモーションの対象顧客リスト、在庫調整の推奨値)を提案します。
5. モデルの運用と改善(Deployment & Monitoring)
開発したモデルを実際に現場で利用し、効果を検証・持続させる段階です。
デプロイメント(実装): 開発環境から本番環境へモデルを移行し、サービスやシステムに組み込みます。
モニタリング: 運用開始後もモデルの精度が維持されているか(モデルドリフトが発生していないか)を監視し続けます。
フィードバックと改善: 現場での利用結果やビジネス効果を評価し、必要に応じてデータ収集方法やモデル自体を改善し、一連のサイクルを回し続けます。
重要な役割とスキル
データサイエンティストは、統計学やプログラミングの知識だけでなく、以下の3つの要素をバランスよく兼ね備えることが求められます。
ビジネス力(Business Acumen): 業界知識、経営課題の理解、分析結果をビジネス上の意思決定に繋げる力。
データサイエンス力(Data Science Skill): 統計学、機械学習、深層学習などの理論と、それらを実装するプログラミング(Python, Rなど)のスキル。
データエンジニアリング力(Data Engineering Skill): 大量のデータを扱うためのデータベース(SQL)やデータ基盤(クラウド、DWH)に関する知識。
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