2025年10月23日木曜日

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のデータドリブン経営とは

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のデータドリブン経営は、**「ゲスト(来場者)一人ひとりの体験の最適化」と「リピート促進」**に重点を置き、デジタル技術と現場の知見を融合させているのが特徴です。

具体的には、来場者のパーク内行動データを収集・分析し、パーソナライズされた体験を提供する戦略を推進しています。


1. データの収集と活用

USJは、来場者の行動や属性に関する様々なデータを収集し、分析に活用しています。

  • 公式アプリの活用(行動データ):

    • 公式アプリから得られる位置情報や利用ログ(待ち時間確認、モバイルチケット、フード・グッズの事前注文機能の利用状況など)を収集しています。

    • これらのデータを基に、来場者のパーク内の動線、滞在時間、興味の対象を把握します。

  • チケット・購買データ:

    • オンラインチケット購入時の**個人情報(属性)や、パーク内での商品購入履歴(ID-POSデータ)**を分析し、ターゲット層の特定やクロスセル(関連商品の販売)促進に活かしています。

  • サンプリング調査:

    • 窓口販売のように個人情報が把握できない場合でも、きめ細かなサンプリング調査を実施することで、来場者の動向を把握しています。

2. パーソナル・レコメンドによる顧客体験の最適化

収集したデータを基に、ゲスト一人ひとりに合わせた情報や体験を提供することで、満足度と消費額の向上を目指しています。

  • 行動に合わせたレコメンド:

    • 来場者を楽しみ方によってセグメントし、「朝、エントランス付近にいる人」にはパーク体験を盛り上げるためのカチューシャやTシャツなどのグッズをアプリでレコメンドします。

    • 「夕方、出口付近にいる人」には、お菓子やぬいぐるみなどのお土産をレコメンドし、購入機会を最大化します。これは、EC的な発想をリアルのパーク体験に落とし込んだ事例です。

  • リピート促進のための分析:

    • 「一回目はアトラクション中心に回った人」が「二回目の来場時はどんな楽しみ方をするか」をデータで予測・把握し、再来場者向けのパーソナル・レコメンド・サービスを充実させています。

    • メールマガジンやプッシュ通知、LINEポイント還元などのキャンペーンを、ターゲットに合わせて展開し、リピート予約拡大の起爆剤としています。

3. データ戦略による組織変革

USJのデータドリブン経営は、単なる分析手法ではなく、「売れるものを作る」組織への変革をもたらしました。

  • ターゲット分析の徹底:

    • 人気の「ハロウィン・ホラー・ナイト」や「ファミリー層向けエリアの新設」などは、アイデアだけでなく、緻密なターゲット層のデータ分析から生まれています。

    • 「ゲストが求めているのはアトラクションそのものではなく、体験によって得られる感情の変化である」という戦略的な定義をデータ分析から導き出し、それに合わせたアトラクションやイベントを開発しています。

  • デジタルとリアルの融合(DX):

    • アプリでの待ち時間やデジタルマップ、デジタルサイネージを活用し、混雑回避のナビゲーションを提供することで、悪天候時や混雑時の顧客体験向上を図っています。

データドリブンな意思決定は、IP(キャラクター)を活用した集客戦略や、季節イベントの企画など、USJの成長戦略全体を支える基盤となっています。

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