2025年9月3日水曜日

兵庫県豊岡市の鞄産業は

 

豊岡鞄の歴史

豊岡市の鞄産業は、約1200年の歴史を持つ**柳行李(やなぎごうり)**の生産に起源を持ちます。これは、柳の木を使ったかごや箱のことで、豊岡は江戸時代に一大産地となりました。明治時代に入り、人々の生活様式が変化するにつれて、柳行李の生産技術と全国に築かれた流通網を活かし、かばんの製造へと転換しました。

その後、時代に合わせて素材を変化させながら発展しました。昭和初期にはベルリンオリンピックの選手団の鞄に採用されるなど、ファイバー鞄が主流となり、全国的な産地としての地位を確立しました。戦後には、塩化ビニールレザーなどの新素材が登場し、高度経済成長期には300社を超える鞄関連企業が生まれ、全国生産の約80%を占めるまでになりました。


豊岡鞄の現在

かつてはOEM(相手先ブランドによる生産)が中心で、豊岡市で作られたかばんだと知られることはありませんでした。しかし、現在では、**地域ブランド「豊岡鞄」**として独自の価値を高める取り組みが積極的に進められています。

  • 地域団体商標の取得: 2006年に「豊岡鞄」が地域団体商標に登録され、厳格な審査基準をクリアした高品質な製品にのみ「豊岡鞄」のタグが付けられるようになりました。

  • ブランド化: 東京をはじめとする大都市での展示会や直営店の展開、ECサイトの構築などを通して、消費者に直接「豊岡鞄」の魅力を発信しています。

  • 技術の継承と人材育成: 職人の高齢化や後継者不足という課題に対し、専門学校「豊岡鞄アルチザンスクール」を設立するなど、若い世代の職人を育てる取り組みが行われています。

  • SDGsへの取り組み: 廃漁網のアップサイクルや、鞄製造で余った端材を利用した小物製品の開発など、サステナブルな素材を活用した商品開発も進められています。

豊岡市は、伝統的な技術を守りつつも、時代に合わせた革新的な取り組みを行うことで、「鞄の街」としてのブランドを確立し、国内外への販路拡大を目指しています。

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