2025年9月21日日曜日

ユダヤ民族の歴史とは

 ユダヤ民族の歴史は、紀元前17世紀頃に始まり、苦難と離散を経験しながらも、独自の宗教と文化を守り続けてきた歴史です。

古代イスラエル王国の成立と分裂

ユダヤ民族の祖先は、旧約聖書に登場するアブラハム、イサク、ヤコブの3人とされています。紀元前17世紀頃、彼らはカナンの地(現在のイスラエル)に定住し、唯一神ヤハウェ(ヤハウェ)を信仰するようになりました。その後、飢饉を機にエジプトへ移り住みましたが、そこで奴隷として扱われ、モーセに率いられてエジプトを脱出しました(出エジプト)。この過程で「十戒」を授かり、ユダヤ教の基礎が築かれました。

紀元前10世紀頃、ダビデ王ソロモン王のもとで、イスラエル王国は統一され繁栄を極めました。特にソロモン王は、エルサレムに第一神殿を築き、信仰の中心としました。しかし、彼の死後、王国は北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂しました。


バビロン捕囚とディアスポラの始まり

紀元前8世紀には北イスラエル王国がアッシリアに滅ぼされ、紀元前6世紀には南ユダ王国が新バビロニアに滅ぼされました。この際、ユダ王国の多くの人々はバビロンに連行され、バビロン捕囚として約50年間、捕虜生活を強いられました。この民族的苦難の時代は、ユダヤ人の信仰をより強固にし、シナゴーグ(会堂)での礼拝が定着しました。

その後、ペルシアのキュロス2世によって解放され、故郷に帰還した人々は、破壊された第一神殿の跡地に第二神殿を再建しました。しかし、紀元1世紀にはローマ帝国の支配下に入り、ローマへの反乱が鎮圧されると、紀元70年に第二神殿は破壊され、ユダヤ人はエルサレムを追放されました。これを機に、ユダヤ人は世界各地に離散し、ディアスポラ(離散)の時代が始まりました。


中世から近代にかけての迫害

ディアスポラ以降、ユダヤ民族は世界各地に散らばりましたが、キリスト教やイスラム教徒の支配下で、宗教的・文化的な理由から迫害されることが多くありました。ヨーロッパでは、ペストの流行や経済的な問題の責任を負わされることもあり、ゲットーと呼ばれる隔離された居住区に住むことを強制されました。

19世紀後半には、ヨーロッパの各地で反ユダヤ主義が強まり、これに対抗する形で、ユダヤ人の故郷であるシオン(エルサレム)に帰還し、自分たちの国家を建設しようとするシオニズム運動が高まりました。


ホロコーストとイスラエル建国

ユダヤ民族の歴史において最も悲惨な出来事の一つが、ナチス・ドイツによるホロコーストです。第二次世界大戦中、約600万人ものユダヤ人が組織的に虐殺されました。この悲劇は、世界中のユダヤ人に強い衝撃を与え、独立国家を持つことの必要性を強く認識させることになりました。

1948年5月14日、ホロコーストの悲劇を経て、ユダヤ人は故郷の地でイスラエル国の建国を宣言しました。これは、約2000年にわたるディアスポラの歴史を終結させ、国家を持つという長年の悲願を実現するものでしたが、同時に、この地に暮らしていたパレスチナ人との対立を生む原因ともなり、現在に続く中東問題の根源となっています。

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