2025年9月23日火曜日

セルフコンパッション(Self-compassion)とは

 セルフコンパッション(Self-compassion)とは、自分自身への優しさ、思いやり、そして受容的な態度を指す心理学の概念です。これは、自分の欠点、失敗、不完全さに対して、他人を思いやるように優しく接すること、そしてその苦しみを人間共通の経験として受け入れることを意味します。セルフコンパッションの第一人者である心理学者クリスティン・ネフ(Kristin Neff)は、この概念を3つの要素に分解して説明しています。


1. 自己への優しさ(Self-kindness)

これは、自己批判や自己判断を避け、自分の失敗や苦しみに対して優しく思いやりのある態度で接することです。完璧主義に陥るのではなく、不完全な自分を許し、受け入れます。例えば、テストで悪い点を取ったときに「私はなんてダメな人間なんだ」と自分を責めるのではなく、「今回はうまくいかなかったけど、次に頑張ればいい。誰でも失敗することはある」と自分に優しく語りかけます。

2. 人類共通の感覚(Common humanity)

自分の苦しみや不完全さが、自分だけの特殊なものではなく、すべての人類が経験する普遍的なものであると認識することです。これにより、孤立感や「自分だけが苦しい」という感覚が和らぎます。失敗や苦痛は、人間であることの自然な一部だと捉えます。

3. マインドフルネス(Mindfulness)

自分の感情や思考を、判断を加えずに、ありのままに観察することです。苦しみや痛みを感じているときに、それを過剰に拡大したり、逆に無視したりするのではなく、ありのままの感情として認識します。これにより、感情に飲み込まれることなく、冷静に対処することができます。マインドフルネスは、セルフコンパッションを実践するための土台となります。


セルフエスティームとの違い

セルフコンパッションは、**セルフエスティーム(Self-esteem)**と混同されがちですが、根本的に異なります。セルフエスティームは、自分の能力や価値を他者と比較して評価する傾向があります。そのため、成功したときには高まりますが、失敗したときには低下しやすいという不安定さがあります。

一方、セルフコンパッションは、自分の価値を外部の評価や成果に依存させません。失敗しても、自分自身を価値のある存在として受け入れることができます。これは、困難な状況においても自分を支える、より安定した心の力となります。セルフコンパッションが高い人は、失敗から学び、回復する力が強い傾向があります。

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