後期高齢者となり、「老いの基本は自立と自律にある」という言葉にご関心をお持ちとのこと、非常に重要な視点です。これは、単に「他人の世話にならない」というだけでなく、「自分らしい生き方」を最期まで貫くための心構えと行動を示しています。
この2つの概念は似ているようで異なる、深い意味を持っています。以下に具体的に解説します。
1. 「自立(Independence)」:他者に依存しない「生活」
自立とは、身体的・経済的に、他者の助けを借りずに自分の生活を維持できる能力のことです。後期高齢期においては、この能力をできる限り長く保つことが、生活の質(QOL)を高く保つための鍵となります。
具体的な実践方法
介護予防につながる日々の行動:
適度な運動: 毎日散歩をする、ストレッチをする、ラジオ体操に参加するなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。これは、筋肉の衰えを防ぎ、転倒リスクを減らすことにつながります。
バランスの取れた食事: 栄養のある食事を自炊し、食欲を保つことは、健康維持の基本です。
社会とのつながり: 地域活動や趣味のサークルに積極的に参加することで、心身の活力を保つことができます。
経済的な自立:
資産や年金収入を把握し、将来にわたる生活設計を立てること。
不必要な出費を抑える、詐欺被害に遭わないよう情報に注意を払うなど、自らの財産を守る意識を持つことが大切です。
2. 「自律(Autonomy)」:他者に左右されない「意思決定」
自律とは、たとえ身体的な援助が必要になったとしても、自分の人生の選択や行動を、他者ではなく自分の意思で決める能力のことです。これは、人間としての尊厳を保つ上で最も重要な要素です。
具体的な実践方法
「自分で決める」ことへの意識:
医療や介護の方針: もしもの時に備え、どのような医療や介護を受けたいか、家族と事前に話し合っておくこと。終末期医療に関する「リビング・ウィル」を記しておくことも一つの方法です。
住まいの選択: どのような環境で暮らしたいか、在宅介護を望むのか、施設入居を検討するのかなど、自分の希望を明確にしておくことが重要です。
「自分らしさ」を大切にする生活:
趣味や学びの継続: 身体的な自立が難しくなっても、読書、音楽、絵画など、自分が心から楽しいと思える活動を続けることは、心の自律を保ち、生きがいにつながります。
日々の小さな選択: 「今日の夕食は何を作ろうか」「どの服を着ようか」といった、日々の小さな選択を自分の意思で行うことが、自律の感覚を養います。
自立と自律は、車の両輪
この2つは相互に深く関わっています。
身体的な自立を保つための努力は、「健康でいたい」という自律的な意思から生まれます。一方で、もし身体的な自立が難しくなったとしても、自律を保つことで、他者の援助を受け入れながらも、自分らしい満足感のある生活を送ることができるのです。
つまり、老いるとは、単に「できないこと」が増えることではありません。「自立」と「自律」を意識することで、変化する自分をありのままに受け入れ、自分らしい生き方を最後まで追求することなのです。
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