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株式会社ADEKAは、多岐にわたる事業を展開する総合化学メーカーであり、特に電子材料と樹脂添加剤という二つの高機能分野を成長の柱としています。
同社が2024年4月からスタートさせた中期経営計画『ADX 2026』に基づき、現状と今後の動向について具体的に解説します。
Ⅰ. ADEKAの「現状」:高機能化学品が牽引
現在のADEKAグループの事業は、主に「化学品」「食品」「ライフサイエンス」の3つの領域に分かれていますが、収益の柱となっているのは高付加価値な化学品分野です。
1. 成長を牽引する事業と市場優位性
| 分野 | 主な製品 | 現状と市場での位置づけ |
| 電子材料 (旧:情報・電子化学品) | 半導体向け高誘電材料、フォトレジスト材料、ディスプレイ向けレジスト | 先端半導体メモリ向け高誘電材料で世界シェア50%超を誇り、収益の柱。生成AI関連の需要拡大を背景に、先端メモリ向け材料の販売が好調に推移しています。 |
| 樹脂添加剤 (旧:機能化学品の一部) | 酸化防止剤、透明化剤、難燃剤 | 世界の業界シェアNo.2。自動車向けや家電筐体向け難燃剤などが好調。再生ポリプロピレンの透明化剤など、環境対応製品の需要も堅調です。 |
| 潤滑油添加剤 (旧:機能化学品の一部) | エンジンオイル用潤滑油添加剤 | 国内新車採用率100%。ハイブリッド車(HV車)の販売拡大を追い風に、アジア地域での販売が好調です。 |
| 食品 | 機能性マーガリン、機能性油脂、プラントベースフード | 機能性マーガリン「マーベラス」シリーズや、プラントベースフード「デリプランツ」シリーズなどが国内で販売好調です。 |
2. 経営状況
利益重視の構造へ: 過去の規模拡大路線から、利益と効率性を重視した高収益構造への転換を進めています。
株主還元: 資本効率性の向上(ROEなど)と同時に、安定配当の方針のもと、自己株式の取得・消却を実施するなど、株主還元にも積極的に取り組んでいます。
Ⅱ. ADEKAの「今後の動向」:半導体とサステナビリティへの集中投資
今後3年間の中期経営計画『ADX 2026』では、「稼ぐ力の強化」「環境貢献製品の拡大」「経営基盤の強靭化」を基本方針に掲げ、特に**「半導体材料」と「環境貢献製品」**に経営資源を集中投下する方針です。
1. 🚀 半導体材料事業のジャンプアップ(電子材料)
半導体市場の成長、特に微細化・高多層化の進展を最大の成長機会と捉えています。
成長目標: 2030年度に半導体材料事業の売上高を2023年度比で3.3倍の1,100億円超に引き上げる目標を掲げています。
領域拡大:
前工程の強化: 主力である先端メモリ向け材料の拡大に加え、ロジック半導体分野での低誘電材料や、最先端EUV(極紫外線)リソグラフィ向け光酸発生剤などで世界シェア5割を目指します。
後工程への参入: 先端パッケージング分野にも進出し、熱インターフェース材料(TIM)など後工程材料の領域拡大を狙っています。
生産・研究開発体制の強化: 台湾市場への本格参入、韓国子会社での設備増強、日本国内での新研究棟建設、研究員増員など、グローバルでの体制強化を加速しています。
2. 🌱 サステナビリティを成長戦略に(環境貢献製品)
地球規模の社会課題解決に貢献する製品を拡大し、成長機会として捉えます。
樹脂添加剤でのシェア奪取: **新規高性能透明化剤「トランスパレックス™」**など、リサイクルしやすいポリプロピレン(PP)の透明化剤市場で、2030年度に市場シェアを60%以上に伸ばすことを目論んでいます。
環境貢献製品の拡大: 循環型社会の実現に貢献する「アデカシクロエイド」シリーズなど、GHG(温室効果ガス)削減につながる製品群の創出と拡大を推進します。
3. 経営基盤の強靭化
DXの推進: デジタル技術を活用した業務改革を継続的に進め、経営効率を高めます。
サプライチェーンの強靭化: 外部環境の変化に左右されないよう、重要原料の管理を徹底し、安定供給できる体制を構築します。
ADEKAの今後の動向は、**「半導体材料での世界トップクラスの技術と地位を確立し、成長分野に集中投資する」とともに、「サステナビリティを軸に環境対応製品で新たな市場を創造する」**という、明確な二軸戦略で展開されていく見通しです。
ご関心のある半導体材料や、新開発の透明化剤などについて、さらに掘り下げて解説しましょうか? 🔬
こちらは、ADEKAの半導体材料事業の展望について解説された動画です。
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