2025年12月9日火曜日

口腔フレイル予防における音読の有効性について

 

🗣️ 口腔フレイル予防における音読の有効性

音読は、**口腔フレイル(オーラルフレイル)**の予防に非常に有効な運動であり、特に高齢者にとって、手軽で継続しやすいセルフケアです。

口腔フレイルとは、歯・口腔の些細な衰えが積み重なり、食べる機能や滑舌などの口腔機能の低下、さらには心身の機能低下(全身のフレイル)へとつながっていく状態を指します。音読は、この口腔機能の低下を多角的に防ぐことができます。


1. 👅 舌と口周りの筋肉の活性化

音読は、話すために必要な様々な筋肉を効果的に動かします。

  • 構音筋(こうおんきん)の強化:

    • 言葉を正確に発音するためには、舌(舌筋)唇(口輪筋)、**頬(頬筋)**といった構音に関わる筋肉を細かく動かす必要があります。音読によってこれらの筋肉が繰り返し使われるため、衰えを防ぎ、**滑舌(かつぜつ)**の維持・改善につながります。

  • 嚥下(えんげ)機能の改善:

    • 舌の動きは、食べ物をのどへ送り込む嚥下の初期段階で非常に重要です。音読で舌筋が鍛えられることで、食べ物や水分をスムーズに飲み込む力が維持され、**誤嚥(ごえん)**のリスク低減に役立ちます。


2. 唾液腺の刺激と唾液分泌の促進

  • ドライマウスの予防:

    • 音読によって口や舌が活発に動くと、唾液腺が刺激され、唾液の分泌量が増えます。唾液は、食べ物の消化を助けるだけでなく、口腔内を洗浄し、細菌の増殖を抑える自浄作用抗菌作用を持っています。

  • 粘膜の保護:

    • 唾液の減少はドライマウスを引き起こし、口腔粘膜の炎症や味覚障害の原因となります。音読で唾液が増えれば、口腔内の健康が維持され、食べる喜び(QOL)の維持にもつながります。


3. 🧠 認知機能の活性化

音読は単なる「口の運動」に留まらず、脳を複合的に使う活動です。

  • 脳の広範囲な刺激:

    • 文字を「見る(視覚)」→内容を「理解する(認知)」→声に出して「話す(運動)」という一連のプロセスは、視覚野、理解野、運動野など、脳の複数の領域を同時に活性化させます。

  • 認知症予防への貢献:

    • この脳の活性化は、認知機能の維持・向上に有効であるとされ、全身のフレイルや認知症の予防という、より広範な健康維持に役立ちます。


💡 効果的な音読のポイント

ポイント具体的な実践方法
適切な速度ゆっくりすぎず、早口すぎない、適度なスピードで読む。
口を大きく唇や舌をしっかりと動かし、大げさなくらい口を開けて発音する。
腹式呼吸横隔膜を使った腹式呼吸を意識すると、声が安定し、呼吸筋も鍛えられる。
内容の選択好きな小説、新聞、詩、音読ドリルなど、楽しく続けられるものを選ぶ。
継続性一度に長時間行うよりも、毎日5分〜10分でも継続することが最も重要。

音読は特別な道具も場所も要らず、誰でもすぐに始められる非常に優れた口腔フレイル予防法です。

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