はい、ご指摘の通り、インターネット、特にソーシャルメディアの世界では、嘘(フェイクニュースや誤情報)は真実よりもはるかに速く、広く拡散することが、科学的な研究によって具体的に示されています。
この現象について、具体的な研究結果と、その背景にある要因を解説します。
🚀 嘘の拡散速度に関する具体的な研究結果
2018年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが科学誌『Science』に発表した大規模な研究は、この問題を定量的に明らかにしました。
この研究は、Twitter上で拡散された約12万6,000件のニュース項目を分析したものです。その結果、以下の衝撃的な事実が判明しました。
拡散速度: 嘘の情報が1,500人に到達するのにかかる時間は、真実の情報よりも約6倍速い。
拡散範囲: 嘘の情報は真実よりも「より遠く、より速く、より深く、より広範囲」に拡散しました。特に、政治関連の嘘の拡散速度が最も速いことが示されました。
リツイートのされやすさ: 嘘の情報は、真実の情報よりもリツイートされる確率が70%高いことがわかりました。
主たる拡散者: 意外にも、この現象の主な原因は自動化されたボットではなく、人間のユーザーであることが判明しました。
🤔 なぜ嘘は真実よりも速く拡散するのか?(3つの主な要因)
この拡散速度の差は、主に人間の心理とソーシャルメディアの構造という2つの側面に起因しています。
1. 人間の心理的要因(目新しさ・感情)
目新しさ(Novelty): 嘘の情報は、真実の情報よりも**目新しい(Novel)**傾向があります。人は、初めて知る驚きのある情報を共有することで、周囲の関心を引き、注目を集めたいという心理的な欲求を持っています。
強い感情の喚起: 嘘の情報は、怒り、恐怖、嫌悪感、驚きといった強い感情を喚起するように設計されていることが多く、これがユーザーの共有行動を強力に促します。真実は、しばしば「悲しみ」「喜び」「期待」といった穏やかな感情を引き起こす傾向にあります。
2. ソーシャルメディアの構造的要因
アルゴリズム: ソーシャルメディアのアルゴリズムは、基本的にエンゲージメント(いいね、コメント、共有)が高いコンテンツを優先的にユーザーのフィードに表示する仕組みになっています。嘘の情報は強い感情を伴うためエンゲージメントが高くなりやすく、結果としてアルゴリズムによってさらに増幅されて拡散します。
シェアの習慣化: 頻繁に情報を共有する**「習慣的な共有者(Habitual Sharers)」**は、情報の真偽をあまり気にせず、プラットフォームからの報酬(いいねや注目)を得るために共有する傾向があり、彼らが嘘の拡散に大きな役割を果たしているという研究もあります。
3. 情報の検証と修正の難しさ
真実は、裏付けとなる証拠や複雑な背景を含むため、理解や検証に時間がかかるのに対し、嘘は単純で分かりやすいメッセージであることが多く、瞬時に受け入れられやすい側面があります。
一度拡散した嘘を訂正する「ファクトチェック」の情報は、その訂正の性質上、目新しさや強い感情に欠けるため、嘘そのものほどの勢いで拡散することは非常に難しいのが現状です。
このように、ネットワークの世界では、「6倍速い」という具体的な数字とともに、人間の心理とプラットフォームの構造が相まって、嘘が真実を凌駕して拡散するという現象が生まれています。
この現象について、デマ情報がどのように拡散していくかを視覚的に学ぶことも大切です。よろしければ、
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