日本の「食料・農業・農村基本法」は、日本の農業政策の方向性を定める**「農業の憲法」**とも呼ばれる極めて重要な法律です。
1999年に制定されましたが、世界情勢の変化(地政学リスク、気候変動、人口減少など)を受け、2024年(令和6年)に初めての抜本的な改正が行われました。
新しくなった基本法のポイントを、4つの柱に沿って具体的に解説します。
1. 食料安全保障の抜本的強化
これまでは「いかに効率よく作るか」に焦点がありましたが、改正法では**「食料安全保障(フードセキュリティ)」**の確保を国家の最優先事項として位置づけました。
平時からの備え: 凶作や輸入停止が起きてから対処するのではなく、平時からリスクを評価し、不測の事態への対応能力を高める。
輸入の安定: 国内生産の拡大を基本としつつ、特定の国に依存しないよう輸入先を多角化し、肥料や飼料、燃料などの生産資材の確保も重視する。
2. 環境負荷低減とスマート農業の推進
持続可能な農業を実現するため、環境への配慮とテクノロジーの活用を明文化しました。
環境との調和: 有機農業の拡大や、化学肥料・農薬の低減など、「みどりの食料システム戦略」に基づいた環境負荷の少ない農業への転換を促します。
先端技術の活用: 人口減少による労働力不足を補うため、**スマート農業(自動走行トラクターやドローン、AI活用)**の導入を国の施策として強力に推進します。
3. 農業の持続的な発展(適正な価格形成)
農家が将来にわたって経営を続けられる仕組み作りです。
適正な価格形成: これまで農産物の価格は市場原理に任されてきましたが、資材高騰などのコスト分を適切に価格へ転嫁できるよう、国民の理解を深め、価格形成の仕組みを整えることが盛り込まれました。
担い手の育成: 効率的な経営を行う大規模農家だけでなく、地域を支える多様な農業者(家族農業や中小規模農家)の活動も支援します。
4. 農村の振興と多面的機能の維持
農業は単に食べ物を作るだけでなく、国土保全や水源涵養(かんよう)、景観維持などの役割(多面的機能)を持っています。
地域コミュニティの維持: 人口減少が進む農村部において、スマート技術を活用した生活インフラの維持や、農村に移住する「関係人口」の拡大を図ります。
鳥獣被害対策: 深刻化するシカやイノシシによる被害への対応も、地域維持の重要な課題として位置づけられています。
まとめ:改正のキーワードは「食料安保」と「持続可能性」
旧法が「国際競争力」や「効率化」を重視していたのに対し、新法は**「不確実な世界情勢の中で、どうやって国民の食を守り抜くか」という守りの視点と、「環境を守りつつ次世代に農業を繋ぐ」**という持続性の視点が強く打ち出されています。
日本の食料自給率(カロリーベースで38%程度)をどう引き上げていくか、その具体的なロードマップはこの基本法に基づいて作られる「基本計画」によって実施されます。
もし、この法律に関連して「自分の住んでいる地域への影響」や「具体的な補助金制度」など、より掘り下げたいトピックがあればお知らせください。
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