スペインはフランスに次ぐ世界第2位の観光大国ですが、2024年から2026年にかけて、急増する観光客と住民生活の摩擦(オーバーツーリズム)が深刻な社会問題となっています。
単なる「混雑」のレベルを超え、住民の生存権を脅かす事態にまで発展している現状と、その背景にある具体的な課題を整理して解説します。
1. スペインのオーバーツーリズムの現状(2024-2026)
2024年には、年間約9,400万人という過去最高の外国人観光客を記録しました。2025年以降もさらに増加傾向にあり、年間1億人に迫る勢いです。これに伴い、以下のような異例の事態が起きています。
激化する住民デモ: バルセロナやマジョルカ島では、数万人規模のデモが発生。一部の過激な参加者が観光客に水鉄砲を浴びせたり、レストランをテープで封鎖して「観光客は帰れ(Tourists go home)」と抗議する様子が世界中に報じられました。
「生活圏」の消失: カナリア諸島やイビサ島では、住宅価格の高騰により、地元出身の教師や警察官、医療従事者が家を借りられず、「バン(車)」で生活しながら通勤せざるを得ない異常事態が発生しています。
観光地としてのイメージダウン: アメリカの旅行メディアが「2025年に避けるべき都市」の一つにバルセロナを挙げるなど、ブランド価値の毀損も始まっています。
2. 具体的な4つの課題
① 深刻な住宅危機
最も大きな課題です。Airbnbなどの民泊プラットフォームの普及により、家主が住民向けの長期賃貸をやめ、より利益の出る観光客向け短期貸付に切り替えました。
結果: 家賃が過去10年で約70%も上昇した地域もあり、若者や低所得層が街から追い出される「ジェントリフィケーション(都市の富裕化・空洞化)」が加速しています。
② インフラと資源の枯渇
観光客は住民よりも多くの資源を消費します。
水不足: スペインは干ばつに悩まされることが多いですが、観光客の平均水消費量は住民の約3倍に達するとされています。
ゴミと交通: 歴史的な街並みの狭い路地に観光客が溢れ、公共交通機関やゴミ収集の能力が限界を超えています。
③ 経済モデルの歪み
観光業はGDPの約13%を占める柱ですが、その恩恵が住民に還元されていないという不満があります。
格差の拡大: 観光で潤うのは不動産投資家や国際的なホテルチェーンばかりで、地元住民は騒音や物価高といった「不利益」だけを押し付けられているという認識が広がっています。
④ 文化的アイデンティティの喪失
地元住民向けの商店(八百屋や修理店)が消え、お土産屋やチェーンのカフェばかりになることで、その街本来の文化や魅力が失われています。
3. スペイン政府・自治体の主な対策
| 都市・地域 | 具体的な対策内容 |
| バルセロナ | 2028年までに市内の民泊用ライセンスを全廃(約1万軒を住宅に戻す)と発表。 |
| マドリード | 歴史的地区での新規民泊ライセンスの発行を凍結。 |
| イビサ・マジョルカ | 違法民泊の取り締まりを強化。イビサ島では民泊供給数が2017年比で80%減少。 |
| バレンシア | 違法民泊に対し、最大60万ユーロ(約1億円)という巨額の罰金を科す。 |
スペインの現状は、観光を「外貨を稼ぐ手段」から**「住民の生活を最優先する持続可能なモデル」**へ、強引にでも転換させようとする過渡期にあります。
この問題の解決策(分散観光や観光税の活用など)について、さらに詳しくお調べしましょうか?
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