イタリアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路(BRI)」から離脱した経緯は、**「経済的期待の裏切り」と「地政学的な再編」**が交差した、現代の国際情勢を象徴する出来事です。
2019年にG7(主要7カ国)で唯一参画し、世界を驚かせたイタリアが、なぜわずか数年で背を向けることになったのか。その経緯と教訓を詳しく解説します。
1. 参画の経緯と動機(2019年)
当時のイタリアは、長引く経済停滞と欧州連合(EU)への不信感の中にありました。
経済の起爆剤: 3度の景気後退を経験したイタリアは、中国の巨大な市場と投資を呼び込み、輸出を拡大させる「特効薬」を求めていました。
港湾の活性化: トリエステ港やジェノヴァ港などの物流拠点を中国のネットワークに組み込み、欧州の玄関口としての地位を確立しようとしました。
政治的アピール: 当時のポピュリスト政権(五つ星運動)は、EUや米国に依存しない独自の外交ルートを示す狙いがありました。
2. 露呈した問題点
しかし、数年経つと「期待していた果実」が全く得られない現実が明らかになりました。
貿易赤字の拡大:
イタリアから中国への輸出は微増(約145億ユーロ → 約172億ユーロ)にとどまった一方、中国からイタリアへの輸入は激増(約350億ユーロ → 約660億ユーロ)しました。
結果として、イタリアの対中貿易赤字は2倍近くに膨らみました。
投資の不均衡: 「一帯一路」に加盟していないドイツやフランスへの中国投資の方が、加盟したイタリアへの投資よりも多いという皮肉な結果となりました。
「債務の罠」と安保懸念: 中国による重要インフラ(港湾など)の支配が進むことへの警戒感や、軍事転用可能な技術の流出に対する米欧からの強い圧力がかかりました。
3. 離脱へのプロセス(2022年〜2023年)
政権交代が決定打となりました。
ドラギ政権の修正: 前任のドラギ首相は、中国によるイタリア企業の買収を「黄金の権限(ゴールデン・パワー)」で阻止するなど、中国への警戒を強めました。
メローニ政権の決断: 2022年に就任したメローニ首相は、選挙前から参画を「大きな過ち」と公言。2023年12月、覚書の更新期限を前に正式に離脱を中国側に通知しました。
4. 結末と現状の評価
イタリアの離脱は、単なる一国の判断を超えたメッセージとなりました。
| 項目 | 結果・影響 |
| 外交的立ち位置 | イタリアは米国・NATO重視の姿勢を鮮明にし、G7の結束を回復させた。 |
| 中国の反応 | 中国は不快感を示したが、欧州との関係全体が悪化することを避けるため、目立った報復は控えている。 |
| 実利の追求 | 「一帯一路」という枠組みは捨てたが、個別の経済協力(貿易)は継続する「現実路線」へ移行。 |
【教訓】「デリスキング(リスク低減)」の象徴
イタリアの事例は、**「中国との経済連携が必ずしも国益に直結しない」**という教訓を世界に示しました。現在は、特定の国に依存しすぎない「デリスキング」が、イタリアを含む欧州全体の共通認識となっています。
このイタリアの決断は、現在も他国の対中政策に大きな影響を与え続けています。さらに詳しく、特定の業界(ファッションや自動車など)への影響について知りたいですか?
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