小学校・中学校におけるGIGAスクール構想の現状は、概ね「ハード面での整備は完了し、利活用が進んでいるものの、いくつかの課題も抱えている」という状況です。
具体的には以下の点が挙げられます。
【現状】
- 1人1台端末の整備完了: 全国の小中学校のほぼ100%で、児童生徒に1人1台の学習用端末(PCやタブレット)の整備が完了しています。一部の未完了分も、端末の故障などによるものと考えられています。
- 高速大容量通信ネットワークの整備: 各学校における高速大容量通信ネットワークの整備も、ほぼ全ての自治体で完了しています。
- 端末活用の日常化: 小学校では約9割、中学校でも多くの学校で、授業で1人1台端末を「ほぼ毎日」「週3回以上」活用しており、活用の頻度は年々増加しています。
- 多様な学習活動への活用: 調べ学習、表現・制作活動(写真・動画等)、遠隔教育、協働学習など、多岐にわたる学習活動でICT機器が活用されています。
- 教員のICT活用指導力の向上: 教員もICT活用指導力の向上に前向きに取り組んでおり、児童生徒の主体的な学びを支援する伴走者としての役割を担おうとしています。
【課題】
- 地域・学校間の活用格差: 端末の整備は進んだものの、自治体間や学校間で端末の活用状況や指導方法に差が生じている点が課題として指摘されています。
- 端末の故障や不具合、管理・保守: 多数の端末が導入されたことで、故障や不具合への対応、デバイスの管理・保守に関する学校側の負担が増大しています。
- ネットワーク環境の安定性: 大勢の児童生徒が一斉に端末を使用することで、通信遅延や接続不安定が生じるケースもまだ見られます。
- 教員のICTスキル不足: 全ての教員がICTを使いこなせるわけではなく、効果的な指導方法が確立されていない、あるいはICT活用に関する研修やサポート体制が不十分といった声もあります。
- ICT支援員の不足と財源確保: ICT支援員の配置は進められているものの、「財源の確保が困難」「求める人材の発掘・確保が困難」といった課題があり、十分なサポート体制が整っているとは言えない状況です。
- 校務DXの遅れ: 授業での活用は進む一方で、教員の校務(成績処理、出席確認など)のICT化はまだ不十分な場合もあり、教員の業務負担軽減には更なる推進が必要です。
- 家庭での環境整備と持ち帰りルール: 端末の家庭への持ち帰りについても、家庭のネットワーク環境の格差や、紛失・盗難防止のための管理など、課題が残されています。
- プライバシーとセキュリティ: ICT機器の利用に伴う情報漏洩やサイバー攻撃への対策、情報モラル教育の徹底も引き続き重要な課題です。
文部科学省は、これらの課題に対応するため、「GIGAスクール運営支援センター」の整備や、教員のICTスキル向上に向けた研修の強化など、様々な取り組みを進めています。GIGAスクール構想は、単なる機器の導入に留まらず、教育の質を高め、Society 5.0時代を生きる子どもたちに必要な資質・能力を育むための重要なインフラとして、今後も進化が求められています。
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