この句は、平安時代の学者であり政治家でもあった菅原道真が、京の都から大宰府へ左遷される際に、邸宅の梅の花に別れを惜しんで詠んだ歌として伝えられています。
句の解説
- 東風吹かば匂いおこせよ梅の花:
- 「東風(こち)」とは、春に東から吹く風のことです。この風は、都から大宰府へ向かう風でもあります。
- 「匂いおこせ」とは、香りを送ってほしいという意味です。
- つまり、「春の風が吹いたら、その風に乗って香りを送ってほしい、梅の花よ」と、梅の花に語りかけています。
- あるじなしとて春を忘るな:
- 「あるじ」とは、主人、つまり菅原道真自身のことです。
- 「春を忘るな」とは、春になれば必ず花を咲かせてほしいという意味です。
- つまり、「私がもういないからといって、春が来ても花を咲かせないようなことはしないでほしい」と、梅の花に伝えています。
句の背景
- 菅原道真は、政治的な陰謀により、都から遠く離れた大宰府へ左遷されることになりました。
- 彼は、愛していた邸宅の梅の花との別れを惜しみ、この歌を詠んだとされています。
- この歌には、都への未練、梅の花への愛情、そして自身の無念さが込められています。
- 「飛梅伝説」
- この歌に感動した梅の木が、彼の後を追って大宰府へ飛んでいったという「飛梅(とびうめ)伝説」が残っています。
句のポイント
- 擬人化:梅の花を擬人化することで、道真の心情をより深く表現しています。
- 対比:都と大宰府、主人と梅の花という対比を用いることで、道真の孤独感や哀愁を際立たせています。
- 情景:東風が梅の香りを運んでくる情景が目に浮かぶような、美しい表現が用いられています。
この句は、菅原道真の心情を象徴する歌として、多くの人々に愛されています。
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