韓国では、日本と同様に地方の過疎化が深刻な社会問題となっています。特に、首都圏への人口集中と少子高齢化が複合的に作用し、地方の活力低下や「消滅可能性都市」の増加が懸念されています。
深刻化する地方過疎化の現状
- 人口減少と集中: 韓国の人口は2020年頃にピークを迎え、その後減少に転じると予測されています。その一方で、人口の半分以上がソウルを中心とする首都圏に集中しており、地方からの人口流出が加速しています。
- 高齢化の進行: 地方では若年層の流出により、高齢化率が急速に上昇しています。一部の地域では高齢化率が21%を超え、「超高齢社会」に突入しており、全羅南道では27.2%に達するなど、その傾向は顕著です。
- 「消滅可能性都市」の増加: 全国の自治体のうち、相当数の自治体が「消滅リスク」を抱えていると指摘されています。人口10万人を下回る自治体は、予算や行政機能の縮小を余儀なくされるため、危機感が強まっています。
- 地方大学の危機: 若者の首都圏志向が強く、地方の大学では定員割れが相次いでいます。一部の地方大学は廃校の危機に瀕しており、これは地域の経済や人材確保にも深刻な影響を与えています。
過疎化の主な原因
- 首都圏への一極集中:
- 経済的機会の偏り: 首都圏に大企業や質の高い雇用機会が集中しており、若者がより良い就職先を求めて地方から流出しています。
- 教育・医療インフラの充実: ソウルをはじめとする首都圏には、有名大学や高度な医療機関が集積しており、教育や医療の質を求めて地方から移住する人が後を絶ちません。
- 文化・利便性: 首都圏は文化施設や商業施設が充実しており、生活の利便性も高いため、若者にとって魅力的な場所となっています。
- 少子高齢化:
- 合計特殊出生率の低下: 韓国の合計特殊出生率は世界最低水準であり、人口減少の大きな要因となっています。
- 高齢化の加速: 少子化と相まって高齢化が急速に進み、地方では若年層の減少が特に顕著です。これにより、地域社会の担い手が不足し、活力が失われています。
- 地方のインフラ衰退:
- 行政、医療、教育の統廃合: 過疎化が進む地方では、行政サービスや医療機関、学校の統廃合が進められることがあります。これにより、生活の利便性がさらに低下し、住民の流出を加速させる悪循環に陥っています。
- 交通インフラの未整備: 地方によっては交通インフラが十分に整備されていないため、移動の不便さも地方離れの一因となります。
過疎化がもたらす影響
- 地域経済の停滞: 人口減少は消費市場の縮小や労働力不足を招き、地域経済の活力を奪います。商店街の衰退や企業の撤退も進み、地域の基盤が揺らいでいます。
- 社会保障制度の維持困難: 高齢化が進む中で、年金や医療などの社会保障制度の維持が困難になる可能性があります。
- 地域コミュニティの崩壊: 若年層の流出は、地域の祭りや伝統行事の担い手不足を招き、地域コミュニティの維持が難しくなります。
- 国土の不均衡発展: 首都圏と地方の格差が拡大し、国土全体の均衡ある発展が阻害されます。
韓国政府の対策と課題
韓国政府も地方の過疎化問題に対し、様々な対策を講じています。
- 地方創生政策: 日本の地方創生政策を参考に、地域経済の活性化や移住支援、地域独自のブランド化などを進めています。
- 「ふるさと納税」制度の導入: 2022年から日本の制度を参考に「ふるさと納税」が始まり、地方自治体の財源確保を目指しています。
- 地方移住支援: ワーケーションや「1ヶ月お試し移住」など、地方への移住を促すための取り組みも行われています。また、都市から農村への移住を希望する人々(帰農・帰村者)への支援も強化されています。
- 地域均衡発展政策: 行政機関や公共機関の地方移転、地域特化型産業の育成、地方大学への重点支援など、首都圏への一極集中を是正し、地方の自立性を強化する政策も推進されています。
- 特別自治道の設置: 江原道が「特別自治道」となるなど、高度な自治権を付与して投資や開発の規制緩和を進め、地域活性化を図る試みも始まっています。
しかし、これらの対策はまだ道半ばであり、地域消滅の深刻度に比して政府予算が少ないとの批判や、一部の地域を除いてはまだ成功事例が少ないという課題も指摘されています。
韓国の地方過疎化問題は、少子高齢化と首都圏一極集中という構造的な問題が根深く、その解決には長期的な視点と多角的なアプローチが求められています。
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