おっしゃる通り、韓国は日本以上に少子高齢化が顕著な国であり、若者の失業率の高さや高齢者の福祉問題も深刻な社会課題として認識されています。そのような状況でIMD世界競争力ランキングで日本より上位にいることは、一見すると矛盾しているように感じるかもしれませんね。
この点を理解するためには、IMDのランキングが何を測っているのか、そして韓国が特定の分野でどのような評価を得ているのかをより詳しく見る必要があります。
IMDランキングの評価軸と韓国の評価
IMDの世界競争力ランキングは、主に以下の4つの大分類と、そこに含まれる多数の小分類の指標で構成されています。
- 経済状況(Economic Performance)
- 政府の効率性(Government Efficiency)
- ビジネスの効率性(Business Efficiency)
- インフラ(Infrastructure)
韓国は、「経済状況」と「ビジネスの効率性」、そして**「政府の効率性」**の一部において、少子高齢化という構造的な課題を抱えながらも、特定の強みで高い評価を得ていると考えられます。
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デジタル化とイノベーションの加速:
- 韓国は、高速インターネット網の整備、モバイル決済の普及、行政サービスのデジタル化といったデジタルインフラが非常に進んでいます。これは「インフラ」の一部や「政府の効率性」「ビジネスの効率性」に寄与します。
- 政府主導でAI、バイオ、半導体などの先端技術分野への投資を強力に推進し、スタートアップエコシステムの活性化にも力を入れています。これにより、イノベーション創出や新産業育成の評価が高まっていると考えられます。これは「ビジネスの効率性」の「技術」や「イノベーション」関連指標に反映されます。
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グローバル市場への積極的な進出:
- 韓国企業は、国内市場が小さいこともあり、最初からグローバル市場をターゲットにする傾向が強く、積極的な海外展開とブランド構築を行っています。K-POPやK-ドラマに代表されるコンテンツ産業の成功は、この戦略の成功例です。これは「経済状況」の「国際貿易」や「国際投資」の評価につながります。
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危機対応力とスピード:
- 韓国は、過去にアジア通貨危機などを経験しており、政府も企業も変化への対応力や意思決定のスピードが速いと評価されることがあります。これは「政府の効率性」や「ビジネスの効率性」の一部の指標に影響する可能性があります。
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外国人材受け入れ政策の側面:
- ご指摘の通り、外国人材の受け入れは重要な要素です。韓国は、製造業の労働力不足を補うために、東南アジアなどからの外国人労働者の受け入れを積極的に行ってきました。特に「雇用許可制」は、技能実習制度に比べて透明性が高いと評価されることもあります。高度人材の誘致にも力を入れています。これは、短期的な労働力不足の解消や、国際的な知識・技術の流入を促す点で「労働市場」や「国際投資」の評価に影響を与える可能性があります。ただし、外国人労働者の人権問題や賃金未払いといった課題も指摘されており、単純に手放しで評価できる側面ばかりではありません。
少子高齢化・失業率・福祉問題とランキングの乖離
一方で、ご懸念されている「若者の失業率」「老人の福祉」「国の存亡」といった社会的な問題は、IMDランキングの直接的な指標にはなりにくい、あるいは時間差で影響が出てくるものだと考えられます。
- 若者の失業率: 韓国の若者の「体感失業率」は統計上の数字よりも高いと言われています。しかし、競争力ランキングは「労働市場の柔軟性」や「熟練労働者の可用性」といった指標で評価され、必ずしも個別の失業率を直接的に反映するわけではありません。むしろ、高い教育水準や労働市場の競争の激しさ(良い面と悪い面がある)が、一部の指標でプラスに働く可能性もあります。
- 高齢者の福祉: 高齢者の貧困率の高さや、社会保障制度の未整備は韓国の深刻な課題です。これは長期的に見れば「財政規律」や「社会の安定性」に影響を与え、競争力にも負の影響を及ぼしますが、短・中期的なIMDの指標には、企業の効率性や政府のデジタル化といった側面がより強く反映される傾向があります。
- 人口減少・国の存亡: 少子高齢化による人口減少は、生産年齢人口の減少、内需の縮小、社会保障費の増大といった形で、間違いなく長期的な国の競争力に甚大な影響を及ぼします。 IMDランキングでも「人口成長率」や「高齢化率」などの指標は含まれていますが、その影響が総合ランキングに顕著に現れるまでにはタイムラグがあります。現在の韓国のランキング上位は、まだその長期的な負の側面が完全に現れていない、あるいは他の強みで一時的にカバーされている状態と考えることができます。
まとめ
韓国が少子高齢化や社会課題を抱えながらも競争力ランキングで評価されているのは、
- デジタル化、イノベーション推進、グローバル戦略といった「未来志向」の分野で突出した強みを発揮していること。
- 政府と企業が一体となったスピーディーな変革への対応力。
- 外国人材の積極的な受け入れなど、労働力確保のための政策的な側面。
これらの点がIMDの評価軸において、現時点でのプラス要因として大きく寄与しているためだと考えられます。
しかし、ご指摘の通り、少子高齢化、若者の失業、福祉問題といった構造的な課題が長期的に競争力に与える影響は避けられません。これらの問題は、ランキング上位国であっても深刻な課題として認識されており、韓国政府も対策に腐心しています。現時点でのランキングは、あくまで「現時点での競争環境」における評価であり、将来にわたる持続可能性を保証するものではないという視点も重要です。
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