マグロが一生泳ぎ続けなければならないのには、その身体の仕組みに直結した切実な理由があります。
主な理由と、驚くべき泳ぎの能力について解説します。
1. なぜ一生泳ぎ続けるのか?(呼吸の仕組み)
マグロが泳ぎを止めない最大の理由は、「ラムジュート換水(衝突噴射)呼吸」という方法で呼吸しているからです。
自力でエラを動かせない: 多くの魚はエラ蓋をパクパク動かして水を取り込みますが、マグロはエラを動かす筋肉がほとんど発達していません。
泳ぐことで酸素を得る: 口を開けたまま泳ぐことで、前方から入ってくる新鮮な海水をエラに流し込み、酸素を取り込んでいます。
止まると窒息する: 泳ぎを止めるということは、人間で言えば「呼吸を止める」のと同じ状態になります。そのため、寝ている間もスピードは落としますが、常に泳ぎ続けています。
2. 泳ぐ速度の変化
マグロは「海の弾丸」とも呼ばれるほど、状況に応じて速度を巧みにコントロールしています。
通常時(巡航速度):
時速 3km〜7km 程度です。人間が早歩きするくらいのペースで、エネルギー消費を抑えながらゆったりと泳いでいます。
索餌・移動時:
時速 20km〜30km ほどに上がります。
獲物を追う時・危険回避時(最高速度):
瞬間的には時速 80km〜100km に達することもあります。この時、マグロは胸ビレや背ビレを体にある溝に格納し、水の抵抗を極限まで減らして加速します。
3. 速く泳ぎ続けるための驚異の身体能力
ただ泳ぐだけでなく、「速く」「効率よく」泳ぐために進化しています。
奇跡の筋肉(赤身の理由):
マグロの身が赤いのは、酸素を蓄える「ミオグロビン」というタンパク質が豊富だからです。これにより、長距離走行に耐えられる持久力(遅筋)を備えています。
体温維持システム(奇網):
通常の魚は海水温と同じ体温ですが、マグロは「奇網(きもう)」という特殊な血管網を持ち、筋肉で発生した熱を逃さず、海水温より高い体温を維持できます。これにより、冷たい海でも筋肉を活発に動かし、高速で泳ぐことが可能です。
まとめ
マグロにとって泳ぐことは、私たち人間が呼吸をしたり心臓を動かしたりするのと同じ「生きるための本能的動作」です。止まることができないという過酷な宿命を背負いつつ、それに見合った最強のエンジン(心肺機能と筋肉)を手に入れた、海のスプリンターと言えます。
0 件のコメント:
コメントを投稿