2025年6月9日月曜日

韓国経済の現状と国民生活への影響

現在、韓国経済は内需の低迷、経済成長の鈍化、そして物価高という複合的な課題に直面しており、これらが国民の生活に深刻な影響を与えています。

1. 内需の不振

韓国では、民間消費、政府消費、建設投資、設備投資といった主要な内需項目が軒並み低迷しています。

  • 民間消費の鈍化: 娯楽・文化、医療サービスなどの消費が振るわず、小売販売は過去に例を見ない3年連続減少を記録しました(2025年2月時点)。これは消費心理の冷え込みを強く反映しています。特に、2024年末の非常戒厳事態や、一部地域での旅行危険国指定などが、宿泊・飲食店業などのサービス消費に大きな打撃を与えました。

  • 建設投資の低迷: 建設投資は2024年第2四半期から四半期ごとに大幅に縮小しており、GDP成長率を押し下げる要因となっています。これは長期的な構造問題として認識されています。

  • 設備投資の減少: 半導体製造装置などの機械類を中心に設備投資も減少しており、経済全体の生産活動に影響を与えています。

内需の不振は短期的な景気変動だけでなく、高齢化の進展、家計資産の不動産への集中、主要産業での雇用創出能力の弱体化といった長期的な構造問題に起因すると指摘されています。

2. 経済成長の鈍化・後退

韓国経済は、主要な輸出部門である半導体の不振や、世界経済の減速、そして米国による関税政策の影響などを受け、経済成長が大幅に鈍化しています。

  • GDP成長率の低下: 2025年第1四半期の韓国の実質GDP成長率は前期比マイナス0.2%を記録し、3四半期ぶりのマイナス成長となりました。これは、内需不振に加え、輸出の鈍化が重なった結果です。国際通貨基金(IMF)は、2025年の韓国の経済成長率を1.0%と予測しており、当初の見通しから引き下げられています。

  • 生産・投資・消費の全てが後退: 2025年1月には、全産業生産が前月比2.7%減少し、設備投資も前月比14.2%減少するなど、生産・投資・消費の全てが急激に萎縮しました。特に半導体部門の不振が目立ちます。

  • 輸出の不確実性: 輸出依存度の高い韓国経済にとって、米国の関税政策や国際的な貿易環境の悪化は大きなリスク要因となっています。半導体やディスプレイ産業は堅調なものの、自動車や鉄鋼などの産業は打撃を受けています。

専門家からは、第1四半期のGDPがマイナス成長に転じたことや、成長率予測が大幅に下方修正されていることから、既に景気後退局面に入っていると指摘する声も上がっています。

3. 物価高と国民生活への影響

物価高は、特に庶民や中産階級の家計を圧迫し、国民生活を一層厳しくしています。

  • 実質賃金の減少: 物価の上昇が賃金の上昇に追いつかず、実質賃金は減少傾向にあります。2022年5月の現政権発足から2025年1月までの21ヶ月間で、実質賃金は17ヶ月で減少しています。特に2025年1月の実質賃金減少率は11.1%に達しています。

  • 食品・外食費の高騰: 加工食品や外食費は継続的に上昇しており、2025年4月には加工食品価格が4.1%上昇、外食費も3.2%上昇しました。これは家計の食費負担を増大させています。ウォン安も輸入物価の上昇を通じて物価高に寄与しています。

  • サービス価格の上昇: 公共サービス、民間サービス共に価格が上昇しており、生活費全体を押し上げています。

  • 高金利の負担: 物価高に加えて高金利が家計にのしかかり、借入金利の返済負担が増加しています。純資産の少ない庶民や中産階級は、物価高と高金利の二重苦にあえいでいます。

こうした状況から、韓国国民の間では「生活が苦しい」という声が多く聞かれ、物価抑制を最優先すべきと考える国民が60%に上るという調査結果も出ています。

まとめ

韓国経済は、内需の長期的な低迷、主要産業の不振、国際的な貿易環境の悪化、そして物価高といった複数の要因により、厳しい状況にあります。特に、実質賃金の減少と生活費の高騰は、国民の購買力を低下させ、日々の生活に直接的な困難をもたらしています。政府は景気回復に向けた政策を打ち出していますが、これらの課題を克服し、国民生活の改善を実現するには、構造的な問題への対応を含む包括的な対策が求められています。

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