2025年6月16日月曜日

EUにおけるシェンゲン協定とは

 EUにおけるシェンゲン協定とは、ヨーロッパの国家間において、国境での通常検査なしで自由に国境を越えることを許可する国際協定です。

1985年にルクセンブルクのシェンゲンという小さな村で、当時の欧州経済共同体(EEC)加盟5カ国(西ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)の間で調印されたことからこの名が付きました。1999年にはEUの法的枠組みに組み込まれ、その範囲は大きく拡大しました。

シェンゲン協定の主なポイント

  • 域内国境検査の撤廃: シェンゲン圏内の国々を移動する際には、原則としてパスポートチェックなどの国境審査が行われません。まるで国内を移動するような感覚で国境を越えることができます。これにより、観光客やビジネスパーソンにとって、ヨーロッパ内の移動が非常にスムーズになりました。
  • 共通の域外国境管理: シェンゲン圏の外から入国する際には、統一された厳格な国境管理が行われます。これにより、域内での自由な移動が保証される一方で、テロ対策や不法移民対策といった治安維持も図られています。
  • 共通査証(シェンゲンビザ)の発給: シェンゲン圏への入国にビザが必要な国籍の人は、いずれかのシェンゲン協定加盟国が発行した「シェンゲンビザ」を取得すれば、原則としてすべてのシェンゲン圏内で滞在が可能です。
  • 警察・司法協力の強化: 域内での自由な移動を安全に保つため、国境を越えた犯罪に対して、加盟国間の警察・司法協力が強化されています。シェンゲン情報システム(SIS)などの情報データベースも活用されています。
  • 短期滞在のルール: 日本国籍を持つ人など、シェンゲンビザが免除されている国籍の場合でも、シェンゲン圏内での短期滞在には制限があります。原則として「あらゆる180日期間内で最大90日間」の滞在が可能です。これは、例えば一度シェンゲン圏を出ても、直前の180日間にさかのぼって合計90日以上滞在していた場合、再度入国しても滞在期間が超過する可能性があることを意味します。

シェンゲン圏に含まれる国

シェンゲン圏は、EU加盟国のほとんどに加え、一部のEU非加盟国も含まれています。

主なシェンゲン協定加盟国(2025年6月現在):

  • EU加盟国(25カ国):オーストリア、ベルギー、ブルガリア(空路・海路は2024年3月31日より、陸路は2025年1月1日より)、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア(空路・海路は2024年3月31日より、陸路は2025年1月1日より)、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン
  • EU非加盟国:アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス
  • 事実上シェンゲン圏に含まれるミニ国家:モナコ、サンマリノ、バチカン市国(周辺国との国境管理がないため)

シェンゲン協定に不参加のEU加盟国:

  • アイルランド
  • キプロス

このように、シェンゲン協定は、ヨーロッパにおける人の自由な移動を大きく促進し、EU統合の象徴とも言える制度です。旅行者にとっては、一度シェンゲン圏に入れば、パスポートチェックなしで様々な国を巡ることができるため、非常に利便性が高いと言えます。

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