2025年10月4日土曜日

「多々ますます弁ず(たたますますべんず)」とは

 多々ますます弁ず(たたますますべんず)」は、「数が多ければ多いほど、それだけうまく処理できる」という意味のことわざです。

優れた手腕や能力を持つ人について、仕事や物事が多ければ多いほど、かえってその力を発揮し、巧みに処理できるさまを賞賛するときに使われます。また、転じて、**「多ければ多いほど好都合である」「たくさんある方が良い」**という一般的な意味でも使われます。

詳しい解説

1. 語句の意味

  • 多々(たた): 非常に多いこと、たくさんあること。

  • 益々(ますます): 一層、いよいよ。

  • 弁ず(べんず): 「弁じる(辨じる/辦じる)」の終止形で、「処理する」「扱う」「巧みにさばく」という意味です。

    • 漢字では「多々益々弁ず」または「多々益々辦ず」と書かれます。「辦」は「あつかう、処理する」という意味です。

2. 由来(故事)

このことわざは、古代中国の歴史書『漢書(かんじょ)』や『史記(しき)』に記された、**漢の高祖(劉邦)と名将韓信(かんしん)**の会話に由来する故事成語です。

  1. 高祖の質問:漢の高祖(劉邦)が、臣下である名将・韓信に「私(高祖)はどれくらいの兵士の将軍になることができると思うか?」と尋ねました。

  2. 韓信の回答:韓信は「陛下はせいぜい10万人の将軍でしょう」と答えました。

  3. 高祖の再質問:高祖が「では、お前(韓信)自身はどうか?」と問い返しました。

  4. 「多々益々弁ず」の返答:韓信は堂々と「臣は多々ますます弁ずるのみ(私は兵が多ければ多いほどうまく使いこなせます)」と答えました。

韓信は、高祖は兵士一人ひとりを統率するのは苦手だが、その代わりに自分のような「将軍を統率する才能」があることを見抜いており、その上で自身の軍事的天才への絶対的な自信を示した言葉です。

  • 補足:「多々益々善し(たたますますよし)」という表現も使われます。これは『史記』の方の記述(「多々益々善なるのみ」)に基づいています。

3. 使い方(例文)

現代では、以下のように使われます。

  • 能力を評価する文脈

    • 「彼は複雑な案件をいくつも抱えているが、多々ますます弁ずるタイプで、かえって生き生きとしている。」

    • 「新しいプロジェクトを任せてみたが、予想通り多々ますます弁ずる手腕で、すべてを完璧にこなしてくれた。」

  • 「多ければ良い」という文脈

    • 「寄付は金額の多少を問わないが、正直なところ、多々ますます弁ずるというものだ。」

    • 「会議にはいろいろな部署の意見が必要だ。参加者は多々ますます弁ずる。」

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