トランプ大統領が「不確実性が背広を着ているような人」と評されるのは

 ドナルド・トランプ氏が「不確実性が背広を着ているような人」と評されるのは、彼の言動や政治手法が予測不可能で、従来の政治家の枠に収まらない特異性を持っているためです。これは、彼がアメリカの政治や外交に与えた影響を説明する上で非常に重要な視点となります。

具体的に、どのような点が「不確実性」と結びつけられるのか、以下に解説します。

1. 予測不可能な発言と政策転換

• 突発的な発言: 彼の発言は、しばしば熟考されたものではなく、その場の感情や直感に基づいてなされるように見えました。特にTwitter（現X）での投稿は、公式な声明よりも先行し、国内外に大きな波紋を呼ぶことが多々ありました。例えば、重要な外交交渉の最中に相手国を批判するツイートをしたり、市場に影響を与える経済政策について事前に予告なく言及したりするなどです。
• 政策の急な変更・撤回: ある政策を打ち出したかと思えば、すぐに撤回したり、大幅に修正したりすることがありました。例えば、メキシコ国境の壁建設資金に関する議会との交渉、医療保険制度改革（オバマケア代替法案）の頓挫、シリアからの米軍撤退宣言とその後の保留などです。これにより、同盟国や市場、さらには自身の政権内でも混乱が生じました。
• メディアとの関係: 従来の政治家がメディアとの関係を重視するのに対し、彼は「フェイクニュース」と公然と批判し、記者会見を拒否したり、特定のメディアを排除したりしました。これにより、情報発信の経路が予測しづらくなり、報道の不確実性が増しました。

2. 既存の政治・外交ルールへの挑戦

• 多国間主義からの脱却: パリ協定（気候変動）、イラン核合意、環太平洋経済連携協定（TPP）など、前政権が推進した国際的な協定から次々と離脱しました。これは、国際協調よりも「アメリカ・ファースト」を掲げ、二国間交渉を優先する姿勢の表れでしたが、同盟国からは「予測不能なパートナー」と見なされる要因となりました。
• 同盟国との関係: NATO（北大西洋条約機構）加盟国に対し、国防費の増額を強く要求したり、日米安全保障条約の見直しに言及したりするなど、長年の同盟関係に揺さぶりをかける発言を繰り返しました。これにより、同盟国は今後の米国の行動を予測しにくくなりました。
• 伝統的な外交儀礼の無視: 首脳会談の場で予定外の発言をしたり、握手を拒否したりするなど、外交儀礼を軽視する姿勢が見られました。これは、外交の場における予測可能性を著しく低下させました。

3. ビジネスマンとしての交渉スタイル

• ディール重視の姿勢: 彼は政治をビジネスにおける「ディール（取引）」と捉える傾向が強く、交渉においては相手を徹底的に揺さぶり、自国の利益を最大限に引き出すことを目指しました。これは、従来の政治家が重視する「信頼」や「協力」よりも、「駆け引き」や「圧力」を優先するものでした。
• 「常識破り」な駆け引き: 関税を武器にした貿易交渉（例：対中貿易戦争）や、北朝鮮の金正恩委員長との異例の首脳会談など、これまでの常識では考えられないような手法を大胆に採用しました。これらの行動は、国際社会や市場に大きな不確実性をもたらしました。

まとめ

トランプ氏が「不確実性が背広を着ているような人」と評されるのは、彼が伝統的な政治の常識や外交ルールにとらわれず、自身の直感やビジネス交渉術に基づいて行動する傾向が強かったためです。その結果、彼の言動は周囲にとって予測困難となり、国内外の政治、経済、外交において、常に予期せぬ展開をもたらす可能性を秘めていると見なされていました。

彼の支持者からは「既存の政治を破壊し、新しい風を吹き込んだ」「正直で本音で語る」と評価される一方、批判者からは「不安定で危険」「国際秩序を破壊する」と懸念されるなど、その「不確実性」は賛否両論の大きな理由となっています。