2025年5月30日金曜日

龍潭寺(りょうたんじ)とは

 龍潭寺(りょうたんじ)は、静岡県浜松市浜名区引佐町にある臨済宗妙心寺派の古刹です。井伊家の菩提寺として特に有名で、その歴史と美しい庭園は多くの人々を魅了しています。

龍潭寺の歴史

龍潭寺の歴史は非常に古く、寺伝によれば天平5年(733年)に行基菩薩によって開創されたと伝えられています。当初は「地蔵寺」という寺号でした。

  • 井伊家との繋がり: 平安時代中期に井伊氏の祖である**井伊共保(いいともやす)**がここで葬られたことから、井伊家の菩提寺となりました。以来、井伊家四十代にわたる祖霊を祀る寺として深く信仰されてきました。
  • 臨済宗への改宗: 室町時代末期、井伊家20代当主の井伊直平が、黙宗瑞淵(もくしゅうずいえん)和尚を中興開山として迎えてから臨済宗妙心寺派の寺院となり、「龍泰寺」と寺号を改めました。
  • 「龍潭寺」への改称: 戦国時代の永禄3年(1560年)、桶狭間の戦いで戦死した井伊家22代当主の井伊直盛(いいなおもり)がこの寺に葬られ、その戒名から「龍潭寺」と改められました。
  • 井伊直虎ゆかりの寺: 大河ドラマでも注目された井伊直虎もこの寺にゆかりが深く、井伊家断絶の危機を救った女城主・井伊直虎の墓も境内にあります。井伊直虎は、龍潭寺二世の南渓瑞聞(なんけいずいもん)和尚の計らいで、女城主として井伊家を支えました。
  • 彦根藩との関係: 井伊氏が関ヶ原の戦いの後に近江国(現在の滋賀県彦根市)に移封された後も、井伊家は龍潭寺を厚く保護し、江戸幕府からも朱印状を与えられました。彦根にも同名の龍潭寺がありますが、遠州(浜松)の龍潭寺が本家筋にあたります。

龍潭寺の見どころ

  1. 国指定名勝 龍潭寺庭園(小堀遠州作):

    • 龍潭寺の最大の魅力の一つは、江戸時代初期に作庭されたとされる池泉鑑賞式庭園です。一般に**小堀遠州(こぼりえんしゅう)**作と伝えられています(異説もあり)。
    • 本堂の北側に位置し、築山(つきやま)の手前に東西に細長い池が配置されています。中央に守護石、左右に仁王石、手前正面に礼拝石(坐禅石)が配され、築山全体で鶴亀が表現されているといわれます。
    • 四季折々に美しい表情を見せ、春のサツキ、秋のドウダンツツジの紅葉など、一年を通じて楽しめます。昭和11年には国の名勝に指定されており、「東海一の名園」とも称されます。
  2. 鶯張り(うぐいすばり)の廊下:

    • 本堂と開山堂を結ぶ廊下は、「鶯張り」と呼ばれる特殊な構造になっています。歩くと「キュッキュッ」という独特の音が鳴り、忍び返しや防犯の目的があったとされます。伝説では、江戸時代の名工・**左甚五郎(ひだりじんごろう)**の作と伝えられています。
  3. 井伊家墓所とゆかりの史跡:

    • 境内には、井伊共保、井伊直虎、その許婚である井伊直親、井伊直政など、井伊家歴代当主や重臣たちの墓所があります。井伊直虎のファンにとっては聖地ともいえる場所です。
    • 龍潭寺の山門から少し南へ歩くと、井伊氏初代の井伊共保が生まれたと伝わる「井伊共保公出生の井戸」があります。
  4. 貴重な寺宝と文化財:

    • 本堂、開山堂、御霊屋など、境内にある6棟の建物が静岡県の文化財に指定されています。
    • 中国から伝わった日本最古の印刷本である「宋版錦繍万花谷(そうはんきんしゅうばんかこく)」や、織田信長の遺品とされる天目茶碗など、貴重な寺宝が多数所蔵されています。
    • 秋の特別展示では、県指定文化財の「龍潭寺屏風 遊楽之図」が公開されることもあります。

龍潭寺は、歴史好き、特に井伊家や井伊直虎に興味がある方には必見のお寺です。また、歴史に詳しくなくても、小堀遠州作と伝わる美しい庭園や鶯張りの廊下、四季折々の景観を楽しむことができるため、多くの方におすすめできます。

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