「ポックリと 逝きたいくせに 医者通い」
このシルバー川柳は、老若男女問わず多くの人の共感を呼び、思わず苦笑いしてしまうような「人間心理の矛盾」を見事に突いた名句です。
この句が何を伝えようとしているのか、いくつかの視点で解説します。
1. 句の意味
「ポックリと逝きたい」: 老後、誰にも迷惑をかけず、苦しまずに、天寿を全うして静かに人生を終えたいという、多くの人が抱く「理想の最期」を指しています。
「くせに医者通い」: それなのに、現実には健康を気にして一生懸命に病院へ通い、長生きしようと努力している様子を指しています。
2. なぜ面白いのか(心理の矛盾)
この句の面白さは、「長生きしたくない」と言いながら「死ぬのは怖い(または苦しむのは嫌だ)」という本音とのギャップにあります。
理想と現実のズレ: 「理想の最期」を語る口では「ピンピンコロリがいい」と言いつつ、身体のどこか不調が出ると真っ先に医者に行く。この、「口では達観したことを言いつつ、本能では必死に生にしがみつく」という人間臭さがユーモアとして表現されています。
「健康でありたい」という強い願い: 病院通いをするのは、単に「死にたくない」というだけでなく、「生きている限り、元気で自立していたい」「家族に負担をかけたくない」という、高齢者ならではの切実な願いの裏返しでもあります。
3. この句が教えてくれること
この句は、皮肉を込めていますが、決して笑い飛ばすだけの句ではありません。
「生きる」ことへの執着は尊い: 「ポックリ逝きたい」と願いつつも、日々の健康管理に励むことは、「今を一生懸命に生きようとしている証」です。
共感の輪: 高齢期に入ると、身体の不調と向き合う時間はどうしても増えます。その苦労や矛盾をあえて川柳という短歌形式で吐き出すことで、同じような境遇の人々と笑い合い、心を軽くする機能も果たしています。
まとめると
この句は、「誰しもが抱える『長生きの不安』と『死への恐怖』という相反する感情を、笑いに昇華した作品」と言えます。
「ポックリ逝きたい」と口にしながらも、今日を懸命に生き、医者で薬をもらって少しでも長く健康を楽しもうとする――。そんな高齢者の、あるがままの人間味あふれる姿を切り取った、非常に味わい深い一句ですね。
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