「這裏(しゃり)」は、禅語で**「ここ」「この場所」「このうち」を意味します。しかし、単に物理的な場所を指すのではなく、「自己の内面」や「今この瞬間」**といった、より深い意味合いで使われます。
具体的な意味と使い方
禅において、悟りや真理は遠い彼方にあるのではなく、自分自身の足元や心の中に存在すると考えられています。この思想を表現する際に、「這裏」という言葉が用いられます。
1. 自己の内面
「這裏」は、人が持つ本来の純粋な心、つまり仏心(ぶっしん)や仏性(ぶっしょう)を指します。悟りを求める修行者は、外に真理を求めるのではなく、「這裏」、すなわち自分自身の心の中にそれを探すべきである、という教えを伝える際に使われます。
2. 今この瞬間
「這裏」はまた、「今、この瞬間、この場」を指し、過去や未来にとらわれず、現在の自己に集中することの重要性を示唆します。禅の修行では、坐禅や日常の行いを通じて、意識を「這裏」に集中させることが求められます。
3. 例文
有名な禅語に「慧玄が這裏に生死なし」という言葉があります。これは、妙心寺の開祖である関山慧玄(かんざんえげん)禅師の言葉とされ、「慧玄が達した悟りの境地においては、生と死という二元的な概念は存在しない」という意味です。つまり、生死という束縛を超越した自由な境地が、慧玄の「這裏」(彼の内面)にあることを示しています。
「這裏」は、場所や状況を指す言葉でありながら、同時に悟りの境地そのものや、その境地に至るための自己の内面を指す、深遠な禅語と言えます。
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