「白河夜船」とは、ぐっすり眠り込んで、外で何が起きているのか全く気づかないこと、または何も知らないくせに知ったかぶりをしてとぼけることの比喩として使われる慣用句です。
現在ではもっぱら「熟睡すること」の意味で広く使われています。
起源・語源の由来
この言葉の語源には、大きく分けて「地名に由来する説」と「京都の地名(または川)に由来する説」の2つの説が広く知られています。
1. 京都の「白河」と「夜船」説(最も一般的な由来)
古くからの言い伝えや落語・狂言などの古典芸能において、よく語られる説です。
- 舞台は京都の白河(現在の京都市左京区白川周辺):昔、京都の白河(白川)という場所を訪れたある男がいました。その男は京都から帰った後、知人たちに対して大げさにこう自慢しました。「私は昔、京都の白河に行ったことがある。夜に船に乗って通り過ぎたが、とても素晴らしい景色だったよ」
- 正体の発覚:しかし、話を聞いていた京都の事情に通じた知人が笑ってこう指摘しました。「白河なんて小さな川に、夜に通るような船などそもそも運行していない。第一、船に乗るような場所ではないはずだ」
- 結論:男は実際には白河なんて行ったことがなく、その夜は自宅でただただぐっすり眠りこけて夢すら見ていなかった(あるいは、行ったこともないのに知ったかぶりをした)ことがバレてしまいました。
このエピソードから、「何も見聞きしていないのに、知ったかぶりをして嘘をつくこと」、転じて「何も気づかずに熟睡すること」を「白河夜船」と言うようになりました。
2. 白河(福島県)の阿武隈川説
もう一つの説として、福島県の「白河」を起源とする見方もあります。
- 奥州の白河(現在の福島県白河市付近)を流れる阿武隈川などを夜間に船で下った際、あまりの暗さや疲労困憊から、周囲の景色や状況が全く目に入らず、ただ眠っているうちに目的地に着いてしまったという実体験に由来するという説です。
現代における使われ方
- 熟睡の表現「昨夜はエアコンが効きすぎていて、朝まで白河夜船だったよ」(=ぐっすり眠ってしまい、途中の物音などに全く気づかなかった)
- 知ったかぶりのニュアンス(本来の意味の残り香)本来の「知ったかぶりをしてごまかす」という意味を含める場合もありますが、現代では圧倒的に「熟睡・熟睡して起きないこと」の意味で使われることの方が多い言葉です。
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