日本全国に約3,000基以上ある灯台の中で、一般内部に入って頂上へ登ることができる灯台は、公益社団法人燈光会が管理する「参観灯台(通称:のぼれる灯台)」と呼ばれる16基のみです。
日本の近代化を支えた歴史的価値の高い建築物が多く、頂上からの360度の大パノラマや美しいレンズを間近で見られることから、全国をめぐるスタンプラリーなども人気を集めています。
その16基の場所、歴史、規模や現状について、地域ごとに具体的に解説します。
【北海道・東北エリア】(2基)
1. 尻屋埼灯台(しりやさきとうだい)| 青森県東通村
- 歴史:
1876年(明治9年)初点灯。設計は「日本の灯台の父」と呼ばれるイギリス人技術者リチャード・ヘンリー・ブラントン。3年余りの歳月をかけて建設された、日本で一番高いレンガ造りの灯台です。2022年に国の重要文化財に指定されました。 - 規模・現状:
高さは約33m。下北半島の北東端にあり、周辺には天然記念物の寒立馬(かんだちめ)が放牧されています。長らく外観のみでしたが、2018年から16番目の「のぼれる灯台」として一般公開が開始されました。冬季(11月〜3月頃)は閉鎖されます。
2. 入道埼灯台(にゅうどうさきとうだい)| 秋田県男鹿市
- 歴史:
1898年(明治31年)初点灯。 - 規模・現状: 高さは約28m。男鹿半島の最北端、北緯40度線上に位置します。全国の「のぼれる灯台」16基の中で唯一の白黒のゼブラ模様(赤白ならぬ白黒)が特徴で、雪景色の中でも目立つようにデザインされています。周辺は観光地としても賑わっています。
【関東・甲信越エリア】(4基)
3. 塩屋埼灯台(しおやさきとうだい)| 福島県いわき市
- 歴史:
1899年(明治32年)初点灯。太平洋戦争時の空襲で大きな被害を受けましたが、戦後に再建されました。美空ひばりさんの名曲『みだれ髪』の舞台としても知られています。 - 規模・現状: 高さは約27m。白亜の美しい姿で、東日本大震災の津波を耐え抜いたシンボル的存在でもあります。周辺にはひばりさんの歌碑や銅像が置かれています。
4. 犬吠埼灯台(いぬぼうさきとうだい)| 千葉県銚子市
- 歴史:
1874年(明治7年)初点灯。イギリス人技術者ブラントンによる設計で、イギリスから輸入したレンガではなく、国内で製造されたレンガ(約19万枚)を使って作られた近代化遺産の傑作です。国の重要文化財。 - 規模・現状:
高さは約31m。世界リトグラフ協会や国際航路標識協会が選ぶ「世界の歴史的灯台100選」にも選ばれており、全国の参観灯台の中で最も見学者数が多い人気の灯台です。
5. 野島埼灯台(のじまさきとうだい)| 千葉県南房総市
- 歴史:
1870年(明治3年)初点灯。前年の観音埼灯台に次いで日本で2番目に洋式灯台として建てられました。関東大震災などで被災・再建を経て現在の姿に。国の登録有形文化財。 - 規模・現状:
高さは約29m。房総半島の最南端(南房総・白浜)に位置し、周囲は温暖な南国風の雰囲気が漂う観光スポットとなっています。
6. 観音埼灯台(かんのんさきとうだい)| 神奈川県横須賀市
- 歴史:
1869年(明治2年)、日本初の洋式灯台として起工(フランス人技術者フランソワ・レオンス・ヴェルニーの指導)。歴史的意義が非常に深く、「日本の西洋式灯台の歴史はここから始まった」と言えます。 - 規模・現状: 高さは約19mと他の大型灯台に比べてやや低めですが、東京湾の入り口(浦賀水道)を行き交う膨大な数の船舶を今も昼夜問わず見守っています。
【東海エリア】(4基)
7. 初島灯台(はつしまとうだい)| 静岡県熱海市
- 歴史:
1959年(昭和34年)初点灯。他の歴史的な初期灯台と比べると比較的新しいですが、2007年に全国15番目の参観灯台として一般公開が始まりました。 - 規模・現状: 高さは約16m。静岡県唯一の有人島である「初島」の最高点にあり、内部には国内の灯台の歴史を学べる「灯台資料館」が併設されています。
8. 御前埼灯台(おまえさきとうだい)| 静岡県御前崎市
- 歴史:
1874年(明治7年)初点灯。ブラントンが設計したレンガ造りの美しい灯台で、2021年に国の重要文化財に指定されました。 - 規模・現状:
高さは約22m。静岡県最御前崎の突端にあり、遠州灘の荒波と太平洋を一望できる、風光明媚な撮影スポットとして知られています。
9. 安乗埼灯台(あのりさきとうだい)| 三重県志摩市
- 歴史:
1873年(明治6年)初点灯。初期のものは木造でしたが、1948年に現在の姿に改築されました。 - 規模・現状:
高さは約15m。的矢湾の入口の岬にあり、全国の「のぼれる灯台」の中で唯一の「四角形(四角塔型)」の形をしているのが最大の特色です。
10. 大王埼灯台(だいおうさきとうだい)| 三重県志摩市
- 歴史:
1927年(昭和2年)初点灯。太平洋の荒波に面した難所に建てられたコンクリート造の灯台です。 - 規模・現状:
高さは約23m。周辺は「絵描きの町」として知られ、画家や写真家が数多く訪れる風情あるリアス式海岸の景観と調和しています。
【近畿・中国エリア】(2基)
11. 潮岬灯台(しおのみさきとうだい)| 和歌山県串本町
- 歴史:
1873年(明治6年)初点灯。ブラントンによって設計された木造灯台からスタートし、のちに石造へと改築されました。 - 規模・現状:
高さは約23m。本州最南端の潮岬に立つ純白の灯台で、太平洋の水平線を丸く見渡せる雄大なロケーションが魅力です。
12. 角島灯台(つのしまとうだい)| 山口県下関市
- 歴史:
1876年(明治9年)初点灯。ブラントン設計。日本海側では最初の洋式灯台であり、外壁に御影石(花崗岩)の切り石が美しく積まれた貴重な建造物です。2020年に国の重要文化財に指定されました。 - 規模・現状:
高さは約30m。エメラルドグリーンに輝く海にかかる角島大橋と合わせ、日本屈指の観光名所となっています。
【九州・沖縄エリア】(4基)
13. 出雲日御碕灯台(いずもひのみさきとうだい)| 島根県出雲市
- 歴史:
1903年(明治36年)初点灯。日本の技術者によって設計・施工された我が国屈指の石造り灯台です。2022年に国の重要文化財に指定されました。 - 規模・現状:
高さは約44mあり、日本で一番背の高い石造り灯台です。犬吠埼と同様に「世界の歴史的灯台100選」にも選ばれています。内部のらせん階段(163段)を登りきったときの達成感は格別です。
14. 都井岬灯台(といみさきとうだい)| 宮崎県串間市
- 歴史:
1929年(昭和4年)初点灯。太平洋戦争時に被災し、戦後に再建されました。 - 規模・現状:
高さは約15m。日南海岸の最南端、野生の馬「御崎馬(みさきうま)」が駆け回る都井岬に位置し、九州で唯一の「のぼれる灯台」です。
15. 残波岬灯台(ざんぱみさきとうだい)| 沖縄県読谷村
- 歴史:
1974年(昭和49年)初点灯。沖縄返還後に建てられた比較的新しい大型灯台です。 - 規模・現状:
高さは約31m。沖縄本島屈指の景勝地である高さ約30mの断崖絶壁の上に立ち、東シナ海の鮮やかなコバルトブルーの海を360度見渡すことができます。
16. 平安名埼灯台(へんなさきとうだい)| 沖縄県宮古島市
- 歴史:
1987年(昭和62年)初点灯。 - 規模・現状:
高さは約25m。宮古島の最東端、細長く海へ突き出した美しい岬(東平安名崎)にあります。全国ののぼれる灯台のなかで最南端に位置しており、宮古ブルーの美しい海とサンゴ礁のコントラストが広がります。
まとめ
これらの16基は、単なる海の安全を守るためのインフラを超えて、日本の近代化の歴史を伝える貴重な「動態保存された文化財」です。多くに資料展示室が併設されており、らせん階段を登った先には、灯台守たちが守り抜いてきた絶景が広がっています。
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